さすがに限界が来てスマホを買ったのが1年半前のことだった。これが自分のケータイを持つデビューだった。40代後半までケータイすら持っていなかったのは,冗談のようだが本当のことである。日本でフツーの仕事をしている中年男子がよくぞここまでケータイなしにやって来られたものだと思う。だからつい最近まで,電車に乗れば本を読んでいたし,思いついたことはv-cornの青で手帳にメモを取り,道を歩くときは景色を見るでもなく静かに考えごとでもできていた。しかし今や,メモのかわりに写真を撮ったり,ラーメン屋で麺がゆであがるのを待つ間にスマホでツイッターをやっていたり,歩きながら音楽を聴いたりしているのだから,すっかり現代風になっている。先週はついに,6.5インチの最新機種に買い替えた。画面も広く,バッテリーの持ちも素晴らしい。防水も優秀で,風呂に浸かってユーチューブを見ている。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎