水族館のイワシの群れや,夕方いっせいに飛んでいく鳥の大群,渋谷のスクランブル交差点の人の流れなど,見事に統制がとれている集団がある。もう少し小さなレベルでは,ペトリディッシュの培地の上で増殖する細胞や,細胞の中に張り巡らされた細胞骨格タンパク質のダイナミクスなども,あたかもどこかに指揮者か監督がいて,そのシナリオ通りに役者が動いているように見える。このようなスケールや物性,相互作用の仕方まで異なった現象が,アクティブマターというキーワードに集約され,共通した物理法則で説明されはじめている。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎