いよいよこのプリントから高校の物理がはじまるぞ,という意気込みで取り組ませるのがいい。まずは,“速度”のおさらいをする。実は,定義をしっかりと日本語で書くのはここがはじめてとなる。定義式は“速さ”のものと同じなのだが,向きを考える(符号付きで値を代入する)ことで,同じ式が“速度の定義式”となること,および,“単位時間あたりの位置の変化”という表現を印象に残してから,“加速度”の話へと入るような展開をした。“加速度の定義”や“加速度の定義式”は,たいへん“速度”とよく似ていることを示すために,板書では並べてかくと効果的だと思われる。また,生徒たちにとっては,加速度の[m/s2]という単位は
大変なじめないらしく,納得してもらうために次元解析風の“単位の計算”を入れた。例題では,軸のとり方の復習をかねて生徒に軸の正をかかせ,加速度を2重矢印で軸の正の向きを正としてかき込むように徹底する。矢印の形を変えることがわかりやすい図の作成につながると考えるからだ。この例題ではあえて負の加速度になるようにしたのは,その後の説明にあるように,「加速度の向きは見た目では判別できない」ということを強調したかったから。問題の(2)では斜面を扱うが,一次元運動なら同じ考え方であることを理解させたかったからである。2題とも生徒に自分で絵をかく時間を与え,自分で絵をかくクセをつけることが大切だとひたすら主張した。
愛知県立瀬戸窯業高等学校教諭 松野聖史