フランクリン(物理学者)
東京書籍作成
2004年5月
Benjamin Franklin
アメリカ,1706-1790
科学者人物誌―物理
フランクリンは,その経歴を印刷工として始め,植民地時代から独立国家へと発展していく時代のアメリカで,自分のまわりで必要と思われるさまざまな公益事業を実行に移し,最終的にアメリカを独立へと導いた中心的人物である。またアメリカの知的成熟にも大きく貢献し,「建国の父」とも呼ばれている。フランクリンは,異母兄弟あわせて17人兄弟の15番目としてボストンに生まれた。父親は蝋燭屋を営んでいた。12歳のときに兄の印刷所を手伝うようになり,そこで印刷業についてのさまざまな知識を学ぶとともに,文筆活動についても独自の訓練をおこなった。17歳になると兄との不和からフィラデルフィアに移り,その地で印刷工として働き始めた。その後,独立に必要な印刷機の買い入れなどのためにロンドンに一年半滞在する。そして帰国後,24歳で独立し,印刷所を始めた。当時の印刷所は,客から依頼された印刷物の作製のほかに,独自で新聞の発行などもおこなっていた。フランクリンも,従来の新聞に比べて質を向上させて独自の批評なども掲載した『ペンシルヴェニア・ガゼット』や,倹約勤勉の処世術にさまざまな皮肉やユーモアを織り交ぜた『貧しいリチャードの暦』を発行して好評を博し,とくに後者の評判は国外にまで及んだ。
東京大学大学院総合文化研究科講師 岡本拓司