「解法は1通りではない」-数学の別解づくりを考えよう-稲永善数―平成15年4月作成より。数学Ⅰでは,展開や因数分解が,高等学校の教材として真先に登場する。数学を展開する上では,計算力は最低限度の資格であるからだ。しかし,ここが最も教師としては泣き所,現場では「数と式」の章では,思わぬ時間を労することになる。かつて東京大学などを合格させる進学校の数学教師が「1/x − 1/x + 1 さえ出来ない
生徒が,増えています」と愚痴をこぼしている。これは,地方の進学校だけの嘆きではない。全国的に学生の計算力が落ちたという1つの証と考えることができる。さて,ここでは,私達数学教師が授業を行う「因数分解」の別解を抜き出してみよう。本質的には,因数を求める問題であるので「恒等式」の係数を求める問題とみなすこともできる。しかし,どのような形の因数になるのかは,複雑な因数分解になるとわからない。教科書では,公式を用いたオーソドックな因数分解がその教材となっているが,他の方法を考えてみよう。
稲永善数