細胞にはDNAやタンパク質,RNA,アミノ酸,脂質など多様な分子が含まれている。これらが化学反応や物理的な相互作用によって互いに影響を及ぼしながら恒常性を保っているのが生きた細胞である。実在の細胞は,DNAが複製されて細胞分裂して増えることもある。このような複雑な細胞の挙動をコンピュータシミュレーションで再現できるのだろうか? もし再現できたとして,それは実物とどのくらい一致するのだろうか? 今回,ミニマル細胞をモデルに精密なシミュレーションを試みた成果が報告されているので紹介したい(1)。この成果が全細胞シミュレーションの現在での到達点である。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎