「ニューサポート高校「社会」vol.34(2020年秋号)特集:感染症」より。マンチェスターで在外研究をしていたとき、イギリス最古の歴史を誇るというブリッジウォーター運河のほとりを幾度となくジョギングした。家を飛び出てマンチェスターの都心と反対側にずっと走っていけば、いつかは大きな運河に合流してリバプールまで行けるはずである。運河には、ナローボートという独特の格好をした小舟がいくつも浮かんでいる。産業革命期のイギリスにおいて、物流を支えたのは水運であり、運河網は大英帝国の毛細血管であった。運河の幅はたいがい小川程度であり、そこを航行したり、すれ違ったりするために、ナローボートはナローな形状になった。
明治大学経営学部教授 中澤高志