細胞内には数百g/Lもの高濃度のタンパク質が含まれている。試験管内でこの状況を再現すれば,おそらく天下一品のこってりスープくらい濃厚な状態になるだろう。このような状態で機能しているのが不思議なものだが,タンパク質は必要に応じて集まったり分散したりしながら働き,生きた状態を作り出しているのである。今回は,タンパク質の溶解度と生命の関係について,鍵となる論文をもとに考えてみたい。結論を先に述べると,多くのタンパク質は溶解度の限界まで発現して機能している。つまり,ある働きがたくさん必要だからそのタンパク質が多量に存在しているのではなく,規定しているのはそれぞれのタンパク質の溶解度なのである。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎