ゲノム編集の新技術クリスパーが登場したのは2012年夏のことだった。原核生物のもつある種の獲得免疫の仕組みを使い,Cas9という小型ヌクレアーゼでDNAの二本鎖の特異的な配列を切断する技術だ。RNAをガイドにDNAを特異的に切断できるのでとても使い勝手が良く,科学史上にないほどの速度で技術革新が続く。ちょうど1年前にクリスパーを用いたヒト受精卵のゲノム操作の論文が報告され(1),マラリア撲滅のためのクリスパーを使う種の遺伝子操作ジーン・ドライブも登場した(2)。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎