くねりとした、柔らかい文字だった。石川啄木は、謹賀新年と毛筆で書き始めている。明治41年だから1908年、同郷の金田一京助に送った年賀状である。東京にある森鴎外記念館の特別展「1...
2024年12月21日
これほど熱心に、朝日新聞を読み込んでくれた人は珍しいかもしれない。「ぼくは新聞人生の半分以上を朝日への対抗意識で過ごしてきた」。そんな言葉が残っている。読売新聞のトップを長く務め...
2024年12月20日
ある日、父がブルーバードを買ってきた。私が小学生のころだったか。中古で、青色の車体の端にはサビがあったけれど、ブルブルという大きなエンジン音に、家族みんなが笑顔になった。すぐにド...
2024年12月19日
太宰治は、自作の四字熟語を作中によく盛り込んだ。例えば『斜陽』にある「含羞旋風(がんしゅうせんぷう)」。一目見て、恥ずかしさが旋風のように飛び込んでくる。未完の『火の鳥』には「七...
2024年12月18日
瀋陽という街を、かつて日本人は奉天と呼んだ。中国の東北地方が広く満州と言われたころの話だ。東京駅に似た駅舎が造られ、日本の子どもが通う学校は、千代田小学校と名付けられた。卒業生の...
2024年12月17日
19世紀の米作家で思想家のヘンリー・D・ソローは20代の末にボストン郊外の湖畔に小屋を建て、2年余りを過ごした。自然のなかで自給自足の生活をしつつ、思索を重ねた日々の記録『ウォー...
2024年12月16日
シリアのアサド政権が崩壊して真っ先に懸念したのは、反体制派とみられて刑務所にいる政治犯たちの安否だった。恐ろしいことが起きたのではないか。そう感じたのは、21年前に取材したイラク...
2024年12月15日
渡り鳥が見たくて、宮城県の伊豆沼・内沼へ行った。早朝、水面を覆う霧の中から、魔法のように無数の点がわき上がる。やがてそれは、空に幾筋もの線を描き始め、矢印となり、羽ばたきのシルエ...
2024年12月14日
歴史は繰り返さないが韻をふむ、と言われる。45年前のきのう。韓国の全斗煥(チョンドゥファン)少将がクーデターを起こした。空挺(くうてい)部隊などを出動させ、要人を拘束し、わずか一...
2024年12月13日