中学校社会-教室の窓Vol.10 2007年4月発行より。1956年11月8日、多くの国民に見送られた南極観測船「宗谷」が東京晴海埠頭を出航した。「宗谷」がめざしたのは、南極大陸の中でも人跡未踏のプリンスハラルド海岸。どんな場所なのか、どれくらい寒いのか、どれくらいの風が吹くのか、すべてが未知の世界への旅立ちであった。第1次観測隊は、数々の苦難を乗り越えて、リュツオ・ホルム湾のオングル島に上陸を果たし、4棟の建物を建設して、翌年の1957年1月29日、その地域一帯を昭和基地と命名した。以後日本は昭和基地を拠点として観測の輪を拡げ、50年間にわたって南極での科学観測に力を注いできた。
国立極地研究所副所長 本吉洋一