公立中学校の校長です。人間関係対応能力が低く,発達障害と推測される生徒Aが本校の通常の学級に在籍していました。その生徒は,入学当初から,乱暴な言動のために周囲の生徒とトラブルを頻発させていました。学校では,その度に事実関係を把握し,当事者の生徒たちに具体的な指導を行うとともに,関係保護者にもその都度説明してきました。
そんなある日,特別支援学級の生徒とトラブルを起こし,相手の生徒に手をつかまれて引っ張られた際に,Aが小指を剝離骨折する事態が生じました。そのときは,互いの保護者に事情を説明し,特段の問題とはなりませんでした。そして,徐々にトラブルも減少し,学校生活では活躍がみられるようになり,3年生となった春の体育祭では応援団のリーダーにもなりました。体育祭の終了後は,私に「感動的な体育祭を設けていただき,ありがとうございました。」と,話してくるようになりました。
ところが,体育祭後の授業日から卒業式までの間,完全不登校となりました。不登校の原因は,はっきりしないところがありますが,保護者の言い分では,「いじめ」ということです。保護者からの話によると,Aが体育祭後に小遣いを貰い,買った品物を巡って父親から叱責された際に,「お父さんは,僕の苦しみを知らない。僕は,ずっと周囲からいじめに遭っているんだ。」と答え,小指の剝離骨折をはじめ小学校の頃からの事例を語ったとのことです。
3年生の7月に,Aの保護者が外部のいじめ被害者の会の代表の方を伴って学校を訪れ,学校の適切な対応を求めてきました。私は,真摯に対応することを話し,学級担任等による家庭訪問や手紙,私や教頭による電話対応を続けてきました。しかし,マンションに居住しているために家庭訪問もインターフォン越しであり,生徒とは会うこともできないまま卒業を迎えることになりました。
卒業後,保護者は検察官に「いじめ事案」等で告訴し,現在は警察署が調査中です。告訴されたのは,小学校6年の学級担任,中学校の1年の担任,2・3年の担任,学年主任,音楽担当の5人です。
告訴の内容は,小学校6年と中学校1年の担任が「いじめ対応の不適切さ」,他の3人は人間関係のトラブルがあった際の「恫喝的な指導」ということでした。
なお,保護者たちは,この訴えをマスコミ各社に流し,地元のテレビ局1社が取り上げ,その際,7月に面談した際に密かに録音していた私の対応についても放送されました。
説明が長くなりましたが,2つのことについてご教示ください。
1 学校では,「人間関係のトラブル」と事実把握しているにもかかわらず,「いじめ」であるとの訴えがあった場合の対応の在り方について。
2 このような訴えがあった場合の,学校の法的な対応の仕方について。
東京教育研究所 教育法規事例研究委員会