指導直前情報「かけはし」2005年6・7月号より。「さんちき」の舞台は,政情不安定な幕末の京都です。しかし,この三吉と親方とのやりとりから感じられるのは,激動の世に生きることへの不安ではありません。いかなる時代にあっても,不動の誇りを持って自らの仕事を後世に残そう,という職人の心意気です。江戸時代,政治上の実権を握る武士の裏で,史上に名を残さずとも,人間が生きるうえで根本的に重要な部分を担っていたのが,三吉や親方のような職人たちでした。ここでは,とりわけ江戸時代の大工職人に焦点を当ててみたいと思います。
東京書籍(株) 国語編集部