【本文より】植物組織培養については,かつての一時期非常にもてはやされ教科書や入試問題でも広く扱われた。しかしながら現在は実用面での数々の問題により,かつて一斉に取り上げられた面影すら感じられない状況にある。
しかしこの分野の授業への導入は,生物学・農学を志す生徒にとって,たまらなく興味深いものである。これからの最先端の学問を探求していく若者たちの基礎研究として非常に有効な教材であると考えられる。
今回プロトプラストを教材として取り入れたのは,プロトプラストは弱いながらも分化全能性(totipotency)を有しており,人為的な他のプロトプラストとの融合による体細胞雑種作出によって,(1)安定した複二倍体の獲得 (2)遠い類縁関係にある核内遺伝子の導入 (3)細胞小器官の移動による核外遺伝情報の交換などの可能性 (4)プロトプラストにプラスミドの形で異種DNAを取り込ませることにより,形質転換を誘起させることも可能である等,応用範囲が非常に広いからである。
なお,今回は普通高校でも可能な細胞融合の観察までの操作法を紹介する。
岩手県立岩谷堂高等学校 及川研