コンラート ツァハリアス ローレンツ (Konrad Zacharias Lorenz)
オーストリア,1903-1989
科学者人物誌―生物
東京書籍2002年10月作成
1986年の残暑きびしい9月のはじめ,第1回ニューロエソロジー国際会議が東京(上智大学)で開かれた。その折,私はローレンツ博士に関する極めて印象的な経験をもった。それは諸外国から参加した多数の研究者が宿泊していたホテルの朝食時のできごとであった。カリフォルニア大のハイリゲンバーク教授夫妻たちのテーブルから,数枚の絵ハガキが各テーブルにまわされ,ローレンツ博士に,この国際会議の成功を知らせるとともに,彼の健康を憂慮して,皆で寄書きを送るということであった。ニューロエソロジー(神経行動学)こそ,ローレンツが創設したエソロジー(動物行動学)の発展した新しい研究分野であることを,すべての人が理解していたからである。この国際会議は,ローレンツが,ティンバーゲン,フリッシュの動物行動学者とともに,1973年にノーベル賞を受賞してから13年後のことであった。
東京大学大学院総合文化研究科 岡本拓司