ヨアヒム アウグスト ヴィルヘルム ヘマリング (Joachim August Wilhelm H?mmerling)
ドイツ,1901-1980
科学者人物誌―生物
東京書籍2002年10月作成
1901年,へマリングはドイツ国立銀行の官吏の息子として生まれた。正確で律義な彼のライフスタイルは,そうした家柄を反映したものであろうか。この性格がヘマリングに“自然”を精密に見る目を培った,と同時に,晩年の彼に自ら孤独を選ばせたのかもしれない。彼は学生時代に音楽が好きで,生物学と音楽のいずれを生涯の仕事にするか迷った時期があったと伝えられている。カイザー・ウィルヘルム研究所(後のマックスプランク研究所)のハルトマン博士の下で学位を取得した後,1927年にはハルトマンの助手になった。原生動物学者であったハルトマンはナポリの実験所から地中海産のカサノリをもち帰り,海藻の生活環に関する研究材料としてヘマリングに手渡した。これがカサノリとの出合いであった。へマリングの有名な実験は,カサノリそのものの正確な観察すなわち仮根部に一核をもつ単細胞体であるという発見に基づくものであった。
東京大学大学院総合文化研究科 岡本拓司