ルイ パスツール (Louis Pasteur)
フランス,1822-1895
科学者人物誌―生物
東京書籍2002年10月作成
パスツールは,メンデルおよびダーウィンとならんで,生物学史の中で最もよく知られた人物であろう。光学異性体と旋光性,乳酸およびアルコール発酵,免疫とワクチンの開発など,その業績は理論と応用の広い範囲にわたり,いずれも現代に直接つながっている。パスツール効果(酸素によって発酵が抑えられる現象)とか,パスツール化(低温殺菌法)などの語は,今でも広く使われている。研究のスタイルの点でも,彼は現代の科学研究の基礎を開いた人として位置づけられる。同じ時代のメンデルやダーウィンは,あるいは修道院長の職務の余暇に,あるいは書斎にこもり,こつこつと仕事を積み上げていった。パスツールは31歳でリール大学の化学教授となってから,一貫して実験室を活動の場として,業績を発展させた。
東京大学大学院総合文化研究科 岡本拓司