パウル エールリヒ (Paul Ehrlich )
ドイツ,1854-1915
科学者人物誌―生物
現代治療医学の基幹をなす化学療法の創始者パウル・エールリヒは,幼時から独創的なひらめきを示した天才的学者であった。ブレスラウ中学時代,人生は夢であるという課題の作文に,生活は酸化作用によって営まれ,夢は脳の酸化作用の変調によって現われると書き,“不可”の評点を与えられたという逸話がある。医学生となってからも無味乾燥な解剖名の暗記などは好まず,解剖の時間には組織切片を染色して細胞の構造を調べた。彼が最も興味をもった学科は化学で,学生としてすでに深い造詣をもっていたので,専門教授も讃歎したという。
東京大学大学院総合文化研究科 岡本拓司