グスタフ ハインリッヒ テーオドール アイマー (Gustav Heinrich Theodor Eimer)
スイス,1843-1898
科学者人物誌―生物
東京書籍2002年10月作成
「種の形成や進化の法則は私の持っているチョウの標本の翅から直接読みとることができる。……その翅に描かれた特徴はそれらの過去と現在の様子を示している。」(アイマー『オルソゼネシスについて』1897,英訳版1898年より)これは今回登場するドイツの生物学者アイマーが語った言葉である。1888年ごろ,彼はアゲハチョウ属(Papilio)の翅の色や模様に注目した。その理由は後述するが,ともかく,いろいろな種を調べていくと,P.alebion,P.paphus,P.glycerionでは11本のタテ縞の模様が見られたが,P.eurymedon,P.turnus,P.alexanor,P.machaonと並べていくと,その本数は徐々に減っていき,P.asteriasでは単色になってしまった。その間,P.machaonでは班点も現れ,とくにP.xuthusやP.xulanthusではそれが目立つのであった。こうした翅の模様の一連の方向をもった変異は,アイマーにとって自分の抱く進化の考えを確信させるものとなった。
東京大学大学院総合文化研究科 岡本拓司