「高校数学ニューサポートVol.3 2005年春発行」より。和算書を調べていると,学校で使う練習問題や,入試問題を作るヒントになりそうな問題によく出会う。ここでは,そのなかから気のついたものをいくつか拾い上げて考えてみたいと思う。ただし,和算書の中には三角関数,対数,指数,確率等は含まれていないと考えておく。というのは,これらを扱った和算書はないわけではないが,何れも江戸末期でオランダなど西欧から渡来した知識そのもので,独創性が加わって和算的発展をしているとはあまり考えられないからである。量的にも少ない。また,座標軸を用いたものもない。もちろん,これを用いれば見通しもよく考え易くなるという問題はたくさん見出される。また,図形としての2次曲線は,楕円が円柱の斜めの切り口として捉えられているだけで,双曲線,放物線は扱われていないといってよい。
東北大学名誉教授 土倉保