「解法は1通りではない」-数学の別解づくりを考えよう-稲永善数―平成15年4月作成より。それぞれの命題から出発して,実関数論で成立していたような色々の定理が同様に成立つかが複素関数論を考える出発点の 1 つだった。コーシーが必要にかられて,複素数を導入し積分論を考えたことも大きな出発点でもあった。複素数を含む四元数(W.R。ハミルトン (Hamilton, 1858)が考えた)の関数論を構成しようとすると,上記の (1), (2), (3) の同値性が崩れてしまう。(1)を仮定すると,それを満たす四元数の関数は,1次関数のみで,関数論としては面白くもなんともないものになる。少なくとも初等関数くらいの関数が必要だ。四元数の関数論では,ある条件を入れると複素数関数論を含むものが構成される。このように,数学は「同値な命題を探すこと」「条件を見つけること」で拡張されたものができるかなど数学の発想はとどまることを知らない。「同値性を証明すること」は,数学では重要なテーマの1つである。
稲永善数