1989年12月,アメリカのブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が会談し「冷戦終結」を世界に宣言した。これが,マルタ会談である。その後,1991年のソ連崩壊をもって冷戦は完全に消滅するが最盛期では米ソ両国の合計で広島型原爆の110万倍という膨大な核兵器が配備されており,全面核戦争の危機にさらされ続けた人類にとって,両国の和解は大いに歓迎すべきものであった。また,91年12月のソ連分裂・消滅後,旧社会主義国のほとんどが資本主義への道を歩みはじめた。現在でも社会主義体制を堅持している国は存在するが,その最大勢力である中国でさえ,1978年末,鄧小平が主導権を握って以来,改革開放を進めており,もはやその内実はほとんど資本主義化しているといってよい。このように,ポスト冷戦期の世界は資本主義がほぼ世界共通の体制となり「大競争(メガコンペティション)」の時代に突入したともいわれる。さらに,90年代に入っても死者1,000人以上を数える戦争・内戦が毎年30以上も発生し,冷戦終結は必ずしも平和の到来を意味しなかった。しかもこの混乱は終息に向かうどころか一層混迷の度合いを深めつつある。その最大の原因は唯一の超大国となったアメリカの動向にある。
立命館慶祥高等学校 斎藤忠和