巻頭エッセイ:能因と節信
兼築信行(早稲田大学教授)
高校国語ニューサポートVol.1(創刊号)
東京書籍2004年4月発行
[本文より]
絵に特別な趣味はないのだが,一幅だけ所持しているのが,この本一洋まつもといちよう(一八九三?一九五二)の「能因と節信」である。僧形と烏帽子姿の人物とが向かい合っている。右は能因法師,左は藤原節信(ときのぶ)という平安中期の歌人である。一洋は京都画壇の日本画家で,山元春挙の早苗塾に属し,人物画に主眼を置いた作家活動を展開した。久しく忘れられた存在であったが,二○○一年の秋,京都文化博物館にて展覧会が開催され,再評価の気運にある。
早稲田大学教授 兼築信行