中学校技術・家庭科の学習指導要領に,「食文化」や「地域の食文化」の語句はないが,「自分の食生活に関心をもち,日常食や地域の食材を生かした調理の工夫ができること」が内容として示され,解説に「地域の食材を用いることの意義を理解し,日常食に生かす工夫を考えて実習を行うようにする。また,郷土料理や行事食について調査したり調理実習を行うことも考えられる。」注1)と記されている。そして,例えば,東書の教科書(家庭703)では,各地の郷土料理が2ページにわたって写真入りで示され,調理技能を習得させるだけでなく,それらの郷土料理が伝えられている背景を学ばせようと読み取れる文章が添えられている。これらのことから,郷土料理や行事食は地域の人々が地域の風土を生かして知恵をしぼり工夫をこらして創造し伝承してきた食の文化であることを子どもたちに認識させよう,つまり食の学習に食文化の概念を導入しようとする動きが家庭科に生じているといえる。
熊本大学教育学部 桑畑美沙子