これまで、外国人児童への指導は、日本語能力の不足を補うことに主眼が置かれ、できるだけ早く日本語環境に適応させることが望ましいと考えられがちであった。しかし、母語の使用を制限し日本語の習得のみを急ぐ指導は、母語と第二言語のいずれも十分に伸びない、いわゆるダブルリミテッドの状態に陥る可能性があることが指摘されている。2025年文部科学省は、「文化的言語的に多様な背景を持つ外国人児童等のためのことばの発達と習得のものさし(以下、『ことばの力のものさし』)」を導入した。これは、母語での思考力や経験を含め、多角的・包括的に捉えようとする点に大きな特徴があり、今後の教科指導を考えるうえで重要な視座を提供してくれる。
研究員4名が「ことばの力のものさし」の考え方を基盤とし、子どもの実態把握、その実態把握に基づく授業実践について検討し、ねらいや流れ、方法を実践事例としてまとめ、その意義を検討する。
教科は、言語能力を育成する中核となる教科である国語科、また教科特有の学習用語の多い、算数科と理科の3教科に焦点を当てて検討することとした。また、各教科、発達段階での子どもの様子や指導の違いが見えるように、抽象的な概念操作ができるようになる前と後の低学年と高学年の事例を配置した。(東研研究報告 No.375)
東京教育研究所
A4判、52ページ