酵素の研究は,薄い緩衝液のなかに基質をたくさん入れ,そこに少量の酵素を加え他条件で行われてきた。なぜかというと酵素の反応が分光光度計などの汎用的な装置でも測定でき,また,反応速度論で分析できるからである。このようないわば実験にとっての理想的な条件は,細胞内のものとは当然ながらいろいろな違いがある。細胞内にある酵素をどう理解したらいいのか,1年ほど前に「細胞内の酵素学へ」で整理し(1),前回は「解糖系の酵素群とメタボロンの理解」で解糖系の酵素を考えてみたが(2),今回,具体的な実験系について考えてみたい。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎