『ATPは生物のハイドロトロープである』という論文がサイエンス誌に報告されたのは2017年のことだった。マックスプランク研究所のアンソニー・ハイマンらの研究チームが報告したこの論文は,ATPがタンパク質の凝集や液-液相分離をふせぐという興味深い発見で,以前に「かがくのおと」でも紹介した。あれから4年が過ぎ,この論文のタイトルにreallyを入れて疑問文に変えた,『ATPは本当に生物のハイドロトロープなのか?』という論文が,レーゲンスブルク大学のワーナー・クンツらの研究グループから報告されている。今日はこの論争を,古い用語を整理しながら紹介したい。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎