ニューサポート高校「理科」vol.35(2021年春号)より。「あれっ,左利きなんだね。」なぜ,ヒトは「利き手」というものに興味をもつのだろうか。右手と左手を胸の前で合わせてみる。大抵の場合,驚くほどピッタリと重なる。これほど左右対称な構造を,粘土細工で作るのは難しいはずだ。だとしたら,箸やペンを持つとき,どっちを使っても良さそうなものだ。皆がランダムに使えば,左右の使用は半々になる。にもかかわらず,古今東西,ホモサピエンスは右利きが圧倒的多数(約9割)である。「左利きなんだね」は,少数派に出会った素直な驚きであろうが,本当の謎は,なぜ,左右対称な体の構造の使用に,偏り(=多数派と少数派の別)があるのか,ということだ。
慶応義塾大学・商学部[生物学教室]・准教授 上村 佳孝