水溶液中の物質は,温度が上がるほど拡散が速くなる。細胞内にあるタンパク質やRNAなども,体温が一定に保たれる恒温動物でない限りは外界の温度の影響を受け,拡散速度が変化するだろう。そのため,細胞内にある物質の拡散速度が一定になるよう何らかの仕組みがあると考えられてきた。12月10日号のCell誌にこのViscoadaptation(粘度適応)のメカニズムについて報告されているので,研究の周辺を含めて紹介したい(1)。生命現象と物理学との接点にある発見はいつもワクワクする。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎