神経変性疾患は脳や神経にある細胞が障害を受けて機能しなくなっていく疾患で,アルツハイマー病やパーキンソン病,プリオン病,筋萎縮性側索硬化症(ALS)などが知られている。いずれも生体内にアミロイドと呼ばれるタンパク質凝集体の沈着がみられるのが特徴である。しかし,アルツハイマー病の原因とされるAβの凝集体やその元になるペプチドをターゲットにした薬が臨床試験で頓挫する事例が相次いでおり,ALSに対しても似たような状況が続いている。そのため,脳に沈着したタンパク質凝集体は,疾患の原因ではないと考える研究者も増えてきていることを半年ほど前に紹介した。今回は,凝集体やドロプレットと毒性との関連を考えてみたい。タンパク質凝集と疾患の関係も,相分離生物学によってこれまでにない見方が可能になる。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎