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連載コラム「かがくのおと」第98回「太古の代謝経路」

  • 理科
  • エッセイ
公開日:2017年03月21日
連載コラム「かがくのおと」第98回「太古の代謝経路」

生物の代謝にはリンが不可欠である。ATPを中心にしたエネルギーの流れも,DNAやRNAへの情報の保存も,タンパク質レベルでのシグナル伝達も,酸化還元に使う補酵素の多くも,リンを持った生体分子が利用されているからである。無機物の中でリンはカルシウムに次いで多く,ヒトの体には約670グラムあるとされる。しかし,リンは地球上には0.1%程度しかない希少な元素である。リン酸塩は基本的には水に溶けにくく(1),初期の生命がいたとされる熱水噴出孔(2)の海水にもあまり存在しなかったと考えられる。そのため,最も始原にいたとされる生物の共通祖先(Last Universal Common Ancestor; LUCA)は,リンを使わない代謝を行っていたのではないかと考えられていた(3-5)。

筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎

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