この夏休み,研究室の学生たちと毎朝集まって,明治と日本人をテーマに30分ほど共読している。今流行の「朝活」のようなものだ。岡倉天心の『茶の本』を一人一段落ずつ順番に音読していき,お盆休みまでに読み終えた。茶の湯の世界は,人生のごく些少な出来事に偉大さを考えさせ,完全そのものよりも完全を求める過程に重きをおく。「故意に何かを未完のままにしておいて,想像力の働きにゆだねて完全なものにしようとする」という。実にすばらしい。説明を尽くさないからこそ,伝わるものがある。これぞ日本である。
筑波大学数理物質系物理工学域教授 白木賢太郎