-総合的な学習の時間- ●
本実践論文は,5年生の児童全員でプロジェクトを立ち上げ,曲のテーマを決め,作詞,作曲を行う「世界でたった一つの合唱曲」を作る活動の報告である。活動のプロセスで子供たちは,主体的かつ対話的に合唱曲作りにかかわり,協働的な学習を体験する。さらに,声楽家や作曲家など外部人材も巻き込んで,合唱曲を作り上げていく。そして,地区の連合音楽会で披露し,6学年時には,その曲を学校にプレゼントすることになる。
最優秀賞受賞に当たって(516KB) |
-保健体育- ●
本実践論文は,(前任校である中学校の)体育科における短距離走・リレーの指導で取り組んだアクティブ・ラーニングの記録である。
最優秀賞受賞に当たって(487KB) |
-算数-
「どの子もが『わかる』『できる』を成立させる指導法の工夫・改善」 (6,998KB)
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本実践は,算数学習におけるつまずきをテーマに,特別な教育的支援が必要な児童に目を向け,その困難さの解消に向けた手立てを,教室全員の児童の「わかる」「できる」につなげていく段階的支援の実践指導である。
まず,算数LD(学習障害)スクリーニング調査を実施,つまずきが顕著な児童を抽出し,個に焦点をあてたセカンド・チェックを行う。セカンド・チェックでは,個々の児童の困難さを具体的・客観的に分析し,その要因を明らかにする。その上で,サード・ステージとして通常の学習外に個々の児童に個別支援を実施し,つまずきに対応した効果的な支援方法を探りつつ困難さを減少させる。さらに,有効と想定された支援を全児童が対象となる一斉指導の授業の場で活かす,という段階的支援である。
結果として,「条件不足提示」「活動の細分化」「運動認知機能を生かす活動」「肯定的評価の連続」などの情報提示や評価の工夫が,つまずきの解消や軽減,学習意欲の高まりに有効に働くことが確認できたとされる。
-全教科-
「カリキュラム・マネジメントで推進するプログラミング教育」 (4,779KB)
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本論文は,つくば市におけるプログラミング教育に関する3年間の取り組みについて評価を行い,カリキュラム・マネジメントの方向性を検討する論文である。
つくば市では,プログラミング教育の理念実現を目指し,つくば市学校ICT教育推進委員会を立ち上げ,情報教育を推進している。この委員会を中心に,すでに作成してあった情報活用能力一覧表をもとに,発達段階に応じた資質能力表を作成し,さらに,プログラミング学習が効果的な単元を洗い出して,各学年各教科の年間計画に位置づけ,学習指導案を作成,それらをもとに,小学校1年生から6年生まで,系統的に配置した必修の「コアカリキュラム」とスキル習得と創造的プログラミングを目的とした「オリジナルカリキュラム」を作成し,さらに「プログラミングの手引き」も作成してプログラミング教育に取り組んでいる。また,つくば市では,「プログラミング的思考」を,「理解や解決のために,問題・事象・活動等を『分解』して『考える』こと」と定義している。
こういった実績について,抽出クラス児童と担当教諭を対象にその効果と課題について調査し,まとめたものが本論文となる。調査結果をもとに,系統性,つくば市独自教科である「つくばスタイル科」との関連,スキル向上などの視点からさらに検証を深め,カリキュラム・マネジメントの精緻化を目指している。
-社会・国語-
「過去を未来につなげる力を育む授業の創造~防災学習を通して~」 (5,311KB)
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本実践は,平成30年9月6日に起きた,北海道胆振東部地震をきっかけに,被害を受けた子どもたちと共に防災の在り方について考えたものである。
筆者自身,東日本大震災の被災者であるが,その時の教訓も意識して,「過去から学び,未来につなげる力を育てる」ことを企図し,社会科単元,国語科単元,総合的な学習の時間をマネジメントし,単元を構成している。
実際の授業は,「自分ごととして深く考える場面の確保」を重視し,当事者意識を持った学習を大切にするとともに,地震を実際に体験した子どもたちの生の声を拾い,それを生かしつつ,子どもたちの気持ちに寄り添い,不安感を共有しながら「命を守るために本気で考えていこう」というスタンスで進められている。
社会科の「地震からくらしを守る」単元で,地震が起きた時の行政や地域の取り組みを学習し,国語科の「調べたことを整理して発表する」単元では,今回の地震で困ったことをグループで話し合い,カードにまとめ,それを分類することで可視化していった。その上で,地震によって起こる様々な問題への対策について話し合い,新聞の形にまとめ,プレゼンテーションとして発表する活動につなげた指導実践の報告である。
-キャリア教育-
「未来・職業への意識を高めるキャリア教育活動プログラムの実践」 (8,940KB)
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キャリア教育に関する課題が指摘される中,「将来や職業への意識づけ」を図り,「普段の学びを自らの将来や職業へつながるものとして意識できる」活動プログラムを開発,実践し,その効果の検証を行った実践論文である。
勤務校の2年生170名の事前調査から,キャリア教育の課題を「自らの将来や働くことに対する意識が低く,日々の学習活動との繋がりを見いだせていないこと」と設定し,ICTを活用して,主体的・協働的に「将来や職業への意識づけ」を図り,「普段の学びを自らの将来や職業につながるものとして意識できる」活動プログラムを開発し実践した。
活動プログラムは,その仕事に就く上で必要なスキルについて考え,表現する「未来の仕事を考えよう」,同じ職場体験を行った生徒グループが,印象的な部分や感動したことなどを再現するムービーを制作し,共有する「職場体験動画を作成しよう」,キャリアプランニングにつながる視点を持てるよう,これまでの人生を振り返りつつ将来に起こることを考える「人生ゲームを作ろう」という3つのプログラムで構成されており,第2学年の5月から9月までの間に実践された。その成果を検証した結果,職業や仕事,未来,将来に対する意識の向上を図ることができたとされる。
奨励賞論文概要紹介 以下2点(1,481KB)
-国語-
「音を補う支援で特性に応じた学び方をめざす支援学級の学習活動」
-理科・総合-
「あきらめなければ夢は叶う~エネルギー教育からSTEM教育へ~」
奨励賞論文概要紹介 以下2点(1,342KB)
-国語-
「仲間と意欲的に学び,言葉を吟味して思いを表現する生徒の育成」
-総合的な学習-
「主体的な探究を通じて新たな価値を創り出す防災教育」
■審査委員
赤堀 侃司
東京工業大学名誉教授
市川 伸一
東京大学大学院客員教授
武内 清
上智大学名誉教授
谷川 彰英
筑波大学名誉教授
壷内 明
前聖徳大学大学院教授・元全日本中学校長会会長
露木 昌仙
前東京学芸大学教職大学院特命教授・元全国連合小学校長会会長
鳥飼 玖美子
立教大学名誉教授
東原 義訓
信州大学教授
藤井 斉亮
東京学芸大学名誉教授
●第35回「東書教育賞授賞式挨拶 東京書籍代表取締役社長 千石雅仁(956KB)
●第35回「東書教育賞」審査委員の講評・所感(4,295KB)
●あとがき(公益財団法人中央教育研究所所長)(1,241KB)
東書教育賞は1984年,東京書籍の創立75周年を記念して設けられました。教科書の発行という公的な事業を行っている会社の社会還元という見地から,ここまで東京書籍を育てていただいた教育界への感謝の気持ちを込めて設置されたものです。
教育現場の地道な実践活動に光を当て,優れた指導法を広める橋渡しをお手伝いしようというものです。