これからの地方創成の一考察 ● 山形県南部,置賜地区は,明治期より畑作が盛んで,昭和40年代まではブランド野菜の産地として賑わいを見せていた。しかし,その後,産地間競争を経て市場は下火となり,加えて農業従事者の高齢化,後継者不足問題を抱えるようになる。現在,農業復興へ向けた挑戦を続けている地区である。こういった地域背景の中で,梨郷小は,地域総合型教育を導入,地域振興と教育振興をともに目指す「社会参画活動」を展開してきた。その中で「子どものうぎょうせいさんほうじん のびのびファーム」という会社組織を模した食農・食育実践学習チームを組織して活動している。この活動は,一方で東日本大震災における被災地,宮城県塩竃市浦戸諸島訪問活動とも結びつき,被災地訪問を継続して行っている。本編では,梨郷産・山形白菜のルーツを塩竃市浦戸諸島に求め,浦戸諸島で種をもらい,梨郷地区で植栽,大きく育て,できあがった白菜を浦戸諸島に届ける活動の記録が紹介されている。 |
古典に親しむ生徒を育てる学習指導の実践(6,575KB) ● 古典作品(国語)に親しみを持たせ,身近に感じさせる工夫を取り入れた実践である。「古典は,まず音から」と考え,毎月,指定した古典作品をグループで暗唱,音読させる学習に取り組ませ,言葉の響きやリズムを体感させ,古典を耳から楽しむ学習を浸透させた。この活動は,学級対抗群読大会に発展し,学年群読にまで発展した。また,「調べ学習」「意見交流会」の設定にも特色がある。グループで古典作品の内容を調べさせ,意見交流し,古人の感性と現代人の感性を比較させる等,古典を身近なものとして体感させる学習を展開した。さらには,「私の枕草子 あなたの枕草子」「おもしろ徒然草」「松尾芭蕉と歩く奥の細道」など創作的要素を持たせた活動へも発展させなど,活動型の古典授業を展開した実践記録である。 |
実感を伴った理解を深めるための教材開発と理科学習指導の工夫(7,164KB)
● 小学校5年生の理科での学習「メダカのたんじょう」を,校内施設として整備しているビオトープやグループ水槽などを活用して実感を伴った理科学習として実践した記録である。実践の工夫ポイントは「身近な自然環境を生かした教材開発」「探究活動を促進させる学習指導の工夫」「課外活動との連携」の3つ。まず,絶滅危惧種であるクロメダカの生息域を調査し,捕獲して学校ビオトープで繁殖させた。学習指導の工夫では,メダカの雌雄を判別しながら飼育,採卵,受精卵の観察等々,一連の学習をグループ別問題解決学習として進めた。課外活動との連携では,有志による「メダカの会」を設立し,ビオトープの管理や夏休みの科学作品展への参加等を積極的に行った。こういった体験型活動を通じて実感を伴った科学的理解を培うよう努めた実践である。
主体的・協働的な問題解決における論理的思考力の育成(6,758KB)
● 小学生を対象とした教育用プログラミング環境を活用し,プログラミングに関する学習を行うことで問題解決能力や論理的な思考力を育てようとした実践である。1年生を対象にした実践で,「つくばスタイル科」の学習として,タブレットPCでプログラミングのアプリケーションを用いて行ったものである。ビジュアルプログラミング言語としては,文科省が公開している「プログラミン」(2010)を使用している。実践を通じて,1年生なりにプログラミングに関する理解が深まり,興味関心も高まっていく様子がうかがえる。加えて,順序立てて行う学習活動は,他教科での論理的な思考力育成にも役立つことが感得された。
俳句で学級づくり―俳句づくりと全校俳句大会の実践を通して―(4,741KB)
● 俳句(俳句・川柳・短歌・標語・児童詩・作文等を含む)を通して特色ある学校作りを進めた記録である。全体構想を,「①慣れる時期/②気づく時期/③高める時期」の3期に分け,1年半の期間をかけて実施した。まずは「慣れる」ことに重点をおき,数多く俳句を作らせることから始め,教科書に掲載されている句会の開き方を参考に,全校に句会開催を呼びかけた。その後,全校俳句大会の実施にこぎつけ,保護者をまきこんだ「ファミリー句会」を呼びかけるに至った。子どもたちには,積極的にコンクールに応募させ,その努力を称揚し自信と活力をよみがえらせた。一方で,ファミリー句会を実践する中で,地域に詩歌が当たり前に存在する風土作りにも努力した実践である。
楽しみ,助け合い,喜びを共感する生徒の育成(6,158KB)
● 体育の学習の中に,友達との共助の視点とデジタルカメラ等を通した客観的な視点を取り入れた実践である。まず,ペア学習制度(技能の高い生徒がマンツーマンで教える)とミーティング(話し合い活動)を取り入れ,友達同士で関わりながら体育実技を伸ばす活動を行い,楽しみながらも粘り強い追究活動ができる生徒を育成した。一方で,デジタルカメラを使い,自分の姿を客観的にとらえ,改善点を探す活動を組み合わせ,さらにレベルの高い技に挑戦しようとする意欲を高めた。こういった実践を通じて,友達同士,互いに認め合い,自分の能力を高めようとする意欲を培うことがで,さらには,一人の成功を皆で喜べる雰囲気を作り出せた。
子どもの自尊感情を高め,豊かな人間関係を目指す体育の実践記録(9,984KB)
● 下野式体育としてマスコミ等でも取り上げられている教師の実践記録である。生徒同士が教える活動(下野論文では,ST学習=スモールティーチャー=と呼んでいる)に特徴がある。ST活動の実施場面は,技能面で細分化されており教える側と教えられる側に大きな技能的な差がないこと,取り上げる種目によりSTが入れ替わることにポイントがあり,互いに自尊感情も高まるという構想で練られている。ICT関連では,「ビフォービデオ」「つまずきビデオ」「示範ビデオ」「アフタービデオ」「ビフォーアフタービデオ」を活用し,ビジュアルに実態を確認しながら進めるところにも特徴がある。こういった実践を通じて,自尊感情を高め,豊かな人間関係を構築することで,いじめ問題を解決しようとする実践である。
科学的な見方や考え方を高め学びに向かう力を育む運動単元の実践(10,112KB)
● 生徒が,自身の経験や知識を関連づけ,自分なりに新たな知識を構成していく授業,理科を学ぶことの意味や価値を実感し,意欲的に学びに向かう力をつく授業を目指した実践である。重点としたのは,①個の文脈に即して主体的考え抜くことのできる発問,指導展開の工夫,②生徒同士が語り合うことを可能にする教師の関わり方,③学びに向かう力を実感できるような振り返りの工夫の3点である。①に関しては,学習者が主体となり,誰もが考え抜くことができるような問いづくりがポイントになる。②に関しては,科学的な根拠の視点を明確にし,筋道を立てて説明すること,それに対してクリティカルに聞き問うこと,異なる意見を持つ者同士の意見交流がポイントになる。そして,学習活動をしっかりと振り返ることが,学びを実感し,学びに向かう力を育むことにつながる。
ふるさとを愛し,ふるさとを守り育てる子どもを育成する道徳教育
生命を見つめる 「見える通りに描く絵」実践
子どもの心と実践力を高める防災教育7年間の軌跡
目指す人間像の共有化による,よりよい「学校ガバナンス」の実現
社会に参画し,他者と協働して倫理的主体を育む道徳授業の実践
■審査委員
赤堀 侃司
東京工業大学名誉教授
市川 伸一
東京大学大学院教授
杉山 吉茂
東京学芸大学名誉教授
武内 清
敬愛大学特任教授・上智大学名誉教授
谷川 彰英
筑波大学名誉教授
壷内 明
前聖徳大学大学院教授・元全日本中学校長会会長
露木 昌仙
東京学芸大学教職大学院特命教授・元全国連合小学校長会会長
鳥飼 玖美子
立教大学特任教授
東原 義訓
信州大学教授
●第32回「東書教育賞授賞式挨拶 東京書籍代表取締役社長 千石雅仁(1,330KB)
●第32回「東書教育賞」審査委員の講評・所感(8,192KB)
●あとがき(公益財団法人中央教育研究所所長)(1.121KB)
東書教育賞は1984年,東京書籍の創立75周年を記念して設けられました。教科書の発行という公的な事業を行っている会社の社会還元という見地から,ここまで東京書籍を育てていただいた教育界への感謝の気持ちを込めて設置されたものです。
教育現場の地道な実践活動に光を当て,優れた指導法を広める橋渡しをお手伝いしようというものです。