「第26回(平成22年度)東書教育賞」受賞者のご紹介

最優秀賞

三浦弘子

 三浦弘子 岩手県花巻市立湯口小学校

小学校部門

食育と家庭科の連携を通し食生活への意欲と実践を育む指導の工夫(134,547KB)

この論文は岩手県の小学校家庭科研究大会における研究主題「未来を創り出す豊かな心と確かな実践力をはぐくむ家庭科教育」に基づき、食生活の実践化と意欲付けを図るために、勤務校で行っている食に関する指導と連携させた研究実践です。全校をあげて、さらに地域、家庭をも巻き込んでの取り組み・実践は大変すばらしいものです。児童も自ら進んで行動している様子や変容がよくわかる優れた論文です。

井上裕一

 井上裕一 熊本県玉名市立有明中学校

中学校部門

追究意欲を高める地域教材の開発と学習活動の工夫(41,918KB)

玉名市の有明海沿岸の米の増産を目的とした国営干拓事業、事業完成後は畑として利用されていた事実、さらに耕作放棄地の増加の課題、その再生プランの作成を展開した実践論文である。昨年の12月6日、諫早湾干拓事業の潮受堤防閉め切りに関して、福岡高裁があらためて国側の主張を退け5年間にわたる「開門」を命じましたが、この実践はこのような社会状況の適時性に合致した論文です。新学習指導要領にも合致した実践で、具体的に生徒が活動する姿が示されており、社会に発信するという社会科の目的を十分に果たした優れた論文です。なお井上先生は第19回、24回、25回の東書教育賞で三度優秀賞を受賞されております。

優秀賞

小学校 部門

野村美由紀 兵庫県宝塚市立仁川小学校

「読書力」を支える「読解力」育成の試み(27,360KB)
この論文は、「読解力」「読書力」「表現力」の三つの力を同時に高めていく学習指導の在り方の一例を示し、その有効性についての研究実践です。読書と読解を一体的にとらえ、子どもたちの「読みたい」「知りたい」「伝えたい」という願いを満たす学習活動を実現する具体的方策を示す研究として評価できる優れた論文です。

金子てる子 愛知県碧南市立棚尾小学校(前・愛知県安城市立志貴小学校)

地域へ働きかける平和教育~「二十世紀からの贈り物」~(43,305KB)
学校の資料室から発見された旧日本軍の落下傘、これを「二十世紀からの贈り物」として、平和を語り継ぐ教材に仕上げ実践した優れた論文です。実践が各種メディアで取り上げられたのは、児童の手で学区に残された戦争資料が発掘されたことばかりでなく、むしろ、児童が実物を通して戦争状況に迫っていった深い学びの姿が感動を呼び込んだことによるものと考えられます。なお金子先生は第17回東書教育賞で優秀賞を受賞されております。

木原加代子 広島県東広島市立河内小学校

和文化教育で一人一人に確かな力をつける学校文化の創造(20,932KB)
現代的な学校教育の課題となっている和文化教育として童謡をとりいれ自己表現を大切にした論文です。実践に当たって、その必要性、身につけさせたい能力などねらいが明確になっています。また方法の面でも工夫がみられます。さらに童謡を通した活動が学力向上や生活態度の定着にもつながっている優れた論文です。

中学校 部門

美濃浦恵子 愛知県一色町立一色中学校

命の尊さを実感し、自信をもって生きようとする生徒の姿を求めて(25,384KB)
自分の存在に自信がなく、不安に駆られる思春期を過ごしている生徒たちが、自信をもって中学校生活を過ごしていけるように支援したいという考えに基づき、生命の尊さと生きることの意義を自覚させるという指導目標を追求した実践です。身体の発育から妊娠・出産、さらに親の気持ちなど、多面的に展開していますが、拡散することなくよくまとまっている優れた論文です。

武井 翔 愛知県岡崎市立北中学校

確かな表現力の育成を図る英語スピーチ学習の工夫(13,368KB)
新学習指導要領における「習得」と「活用」の観点を踏まえて、中学1年生を対象とした、確かな「表現力」の育成を目指した実践研究の記録です。最近の生徒の生活には、悩みや相談など、インターネット上のコミュニケーションの広がりが見られますが、果たして彼らの気持ちが十分に伝わっているのかという疑問から、1年生では、自己表現のひとつとして「スピーチ」に着目し実践を進めています。表現意欲と表現力の向上を目標に「生き生きと学び合い、伝え合う」生徒の姿が伝わってくる優れた論文です。

新井 仁 長野県長野市立柳町中学校

統計資料を取り入れた数学的モデリングの教材開発(13,234KB)
統計資料を取り入れた数学的モデリングの教材開発を行うことを目的とした実践です。新井先生の自家用車買い替えに伴い、旧車両と新車両の燃料費と給油量の統計資料に基づき、新車両がもたらす経済面及び環境面への効果がどの程度期待できるかを考える授業を試みています。日常生活や社会での数学の活用を意図した新たな教材研究であり、今後の数学の授業の在り方を提案している優れた論文です。

小学校 部門 [論文概要紹介 以下5点](1074KB)

特別賞

大地 斉 茨城県日立市教育研究所

県内初!こども発達相談センターの開設に向けて
校長という教育現場出身の一人の行政マンが3年という期限の中で、発達障害児への早期相談及び早期総合支援を推進するため、教育研究所長としてどのような役割を果たしてきたか、また、どのようにして県内初の「子ども発達相談センター」を開設することができたかをその経緯を述べ、教育・行政・医療による連携の必要性を明らかにした論文です。総合的な視点から十分検討がなされており、優れた実践記録です。なお大地先生は第23回東書教育賞で最優秀賞を受賞されております。

奨励賞

片岡大輔 千葉県山武市立南郷小学校

江戸時代の文化を楽しく学習し、その文化のよさに気づく指導方法の工夫

麦倉芳信 埼玉県春日部市立備後小学校

言葉の学習としての小学校外国語活動

久原哲哉 福岡県福岡市立城南小学校

ICT学習支援ネットワークを活用した社会科学習指導の工夫

石堂 裕 兵庫県たつの市立小宅小学校

子どもたちと地域にあたたかい絆が生まれる環境学習をめざして

中学校 部門 [論文概要紹介 以下6点](1,398KB)

特別賞

柿沼宜夫 茨城県つくば市教育委員会

4C(協働学習・言語力・思考力・学習内容)を育むICT教育
つくば市ではこの約15年間、教育用グループウェアやテレビ会議システムを使って学校間や博物館や研究所と協働学習を進めてきました。しかし、ICT技術の急速な発達により、これまでICTの「C」をcommunicationとだけ考えるのではなく、協働学習community、 言語力communication、思考力 cognition、学習内容 contentというように4つの「C」に位置づけ市内全小中学校で実践しました。市内51校全校で取り組んだユニークな論文であり、高く評価できる貴重な優れた論文です。

奨励賞

阪本和則 京都府京田辺市立大住中学校

観点別に学力を把握するテスト分析の方法

25回東書教育賞贈呈式集合写真

第26回東書教育賞贈呈式 平成23年1月15日 東書ホールにて

審査委員紹介

赤堀先生

赤堀 侃司
白?大学教授

秋田 喜代美

秋田喜代美
東京大学大学院教授

坂元先生

坂元 昂
社団法人日本教育工学振興会会長

杉山先生

杉山 吉茂
東京学芸大学名誉教授

寺崎先生

寺﨑 昌男
立教学院本部調査役・東京大学名誉教授

鳥飼先生

鳥飼 玖美子
立教大学大学院教授

東原先生

東原 義訓
信州大学教授

三上先生

三上 裕三
聖徳大学教授、元全国連合小学校長会会長

●東書教育賞は教育現場を支援します 東京書籍代表取締役社長 川畑慈範(6,184KB)
●第26回「東書教育賞」の審査を終えて・ICTに関わる論文の総評・審査委員の講評・所感(42,892KB)
●あとがき(財団法人中央教育研究所所長)(1,074KB)

「東書教育賞」設立主旨

東書教育賞は1984年,東京書籍の創立75周年を記念して設けられました。教科書の発行という公的な事業を行っている会社の社会還元という見地から,ここまで東京書籍を育てていただいた教育界への感謝の気持ちを込めて設置されたものです。
教育現場の地道な実践活動に光を当て,優れた指導法を広める橋渡しをお手伝いしようというものです。


過去の入賞論文

事務局

(財)中央教育研究所内「東書教育賞」審査事務局
〒114-8524東京都北区堀船2-17-1
TEL:03-5390-7488  FAX:03-5390-7489
URL:http://www.chu-ken.jp