幼児期の教育との接続
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」と国語をつなぐ
新しい小学校学習指導要領では,「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」を踏まえた指導を工夫することにより,幼児期の教育との接続を図ることが求められています。そこで,一年4月の教材では,「10の姿」と国語の学びとの関連を意識しました。
児童一人一人の姿から,言葉に関する資質・能力を見取ることで,児童の持っている力を引き出しながら,国語の学びにつなげることができます。
「10の姿」については,以下で解説しています。
想定される「10の姿」(例)
文字などへの関心・感覚
教科書に書かれている文字に関心を持ち,知っている文字を指したり,音読に合わせて文字を追ったりする。
豊かな感性と表現
みずみずしい感性をもとに,感じたことや考えたことを動きや言葉などで表現する。
協同性
友達のよさに気づき,自分の思いや考えを相手に分かるように伝えて活動を進める。
言葉による伝え合い
考えたことを言葉によって伝え合い,活動を進める。
関連する国語の学び(例)
音節と文字との関係に気づく。
姿勢に気をつけて,しっかり声を出して話す。
言葉の響きやリズムを感じながら音読する。
互いの話に関心を持って話し合う。
読んで感じたことや考えたことを共有する。
その他の教材の例
よろしくね(一上P10)
いろいろな友達と積極的に関わり,名前などを伝え合って,互いのことを知ることを楽しむ。
関連する「10の姿」の例
- 言葉による
伝え合い - 協同性
- 思考力の
芽生え - 自立心
こえをとどけよう(一上P14)
周りに聞こえないよう作戦会議をしたり,遠くの友達に聞こえるよう名前を呼んだりして,相手との距離などによって,必要な声の大きさが違うことに気づく。
関連する「10の姿」の例
- 言葉による
伝え合い - 協同性
- 思考力の
芽生え - 自立心
あいうえおのことばをあつめよう(一上P22)
音節と文字との関係に関心を持つとともに,「あ」「い」「う」「え」「お」のつく言葉を身の回りから集める。
関連する「10の姿」の例
- 文字等への
関心・感覚 - 思考力の
芽生え - 自立心
ほんがたくさん(一上P24)
読み聞かせを聞いて感じたことや考えたことを伝え合ったり,学校の本棚を見たりして,本を読むことへの関心を持つ。
関連する「10の姿」の例
- 文字等への
関心・感覚 - 豊かな
感性と表現 - 思考力の
芽生え - 自立心
幼児教育からのステップアップを緩やかに
一年上巻では,幼児教育で行われる活動も踏まえて,言語活動を段階的に設定しました。
「頑張ったらできるかも!」「やってみたい!」
児童は安心感と意欲を持って,小学校の学習に挑戦することができます。
「話す」言語活動の例
1年4月
こえをとどけよう(一上P14)
友達の名前を呼ぶという,
ゲーム的な活動を通して,
教室で声を出すことに慣れるとともに,
声の大きさの使い分けを意識する。
まだよく知らない子もいるから,みんなの前で声を出すのはドキドキする。でも,あの子の名前なら呼べるかも。
1年6月
みんなにはなそう(一上P38)
身の回りで見つけたものについて
クイズを出し,聞き手との応答を通して
発表する。
ぼくが見つけたものをみんなに教えたい!一度にたくさん話すのは難しいけど,質問に答えることならできそう。
1年9月
はなしたいなききたいな(一上P112)
夏休みの思い出について,
4〜5文程度のまとまりのある話を
一人でする。
夏休みに楽しかったことをみんなに聞いてもらいたいな。同じクラスの友達の前でなら,たくさん話せそう!
1年下巻へ
発達段階を考慮して変わる紙面構成
学年が上がるにつれて,幼児期における遊びを通した総合的な学びから,自覚的な教科の学習へと,児童の学びは徐々に移っていきます。発達段階に応じた「主体的・対話的で深い学び」を実現できるよう,題材や活動形態はもちろん,紙面構成も段階的に変えています。
「話し合い」単元の導入紙面(1〜3年)
1年
なにに見えるかな(一下P30)
葉っぱや木の実を並べて,何に見えるか考え,思いついたことを話し合う。
題材や活動への
興味・関心を持つ
2年
うれしくなることばをあつめよう
(二上P116)
人から言われて嬉しかった言葉について話し合う。
学習活動の
見通しを持つ
3年
グループの合い言葉をきめよう
(三上P116)
今月のグループの合い言葉について,グループで話し合って決める。
課題意識を持つ
中学年以降の学びへ
中学校教育との接続
中学校の学びを見据えた系統性
新しい小学校学習指導要領では,小・中学校を通じた学習の系統性が重視され,指導事項と言語活動例が 系統的に構成されています。「新しい国語」の各領域の学習は,新学習指導要領に示された指導事項と言語活動例をもとに,中学校以降の学びも見据えて系統的に構成しています。
「新しい国語」の系統性については,言葉の力の系統性をご覧ください。
学びを振り返り,未来を見つめる
6年の2・3月には,6年間の学習を振り返るとともに,中学校以降の自分の未来を見つめて学習を行う単元を,各領域とも設定しています。
【説明文】プロフェッショナルたち
(六年P210)
さまざまな職業のプロフェッショナルたちの生き方や考え方についての文章を読み,自分が考えるプロフェッショナルについて文章にまとめる学習を行います。さまざまな人の生き方や考え方に触れることで,自らの考えを広げたり深めたりします。
【言語】言葉の学習をふり返る
(六年P226)
これまでに行なってきた言葉に関わる学習をさまざまな観点から振り返るとともに,これからの言語生活の中でそれらの学習をどのように生かしていくかを考えます。
【書く】「卒業文集」を作ろう
(六年P232)
6年間に経験したことを振り返り,お世話になった人へ思いを伝える文章を書き,卒業文集を作る学習を行います。思いを伝えるために,文章の構成を考えたり表現を工夫したりする力を身につけます。
【話す・聞く】聞いてほしい、この思い(六年P238)
前単元で卒業文集に書いたことをもとに,6年間で経験した出来事から持った思いや考えを,お世話になった人たちの前で話す学習を行います。伝えたいことに合わせたスピーチの構成や表現の工夫,言葉の取捨選択などを考える力を身につけます。
【文学】君たちに伝えたいこと/春に
(六年P242)
6年間の国語の学習を振り返るとともに,「君たちに伝えたいこと」「春に」の2つの作品に込められた思いを捉える学習を行います。中学校以降の学習へ向けて,言葉を使って考え,表現し,伝え合うことの意味を捉え直します。
六年間の学習をふり返って
(六年P254)
小学校の学習の中でできるようになって嬉しかったことや頑張ったことを振り返るとともに,中学校の学習でできるようになりたいことや頑張りたいことを考えます。これまでの学びを価値づけ,これからの学びに向けた意欲を高めます。