授業はどのように変わる? 新学習指導要領 Q&A

Q6

深い学びは,どうすれば実現できますか?

A6

子供が「見方・考え方」を働かせ,より科学的な概念を形成し,次の学習や日常生活に生かすことができるようにすることが考えられます。

ポイント

  • 深い学びでは,子供が見方・考え方を自在に働かせながら資質・能力を獲得するようになっているか,獲得した知識がつながって概念的に理解しているか,獲得した知識を次の学習や日常生活で活用できるようになっているかという視点で授業改善を目指す。

「深い学び」の実現に向けた授業改善の視点

「深い学び」とは,どのような学びをイメージしますか。主体的な学びや対話的な学びは具体的な子供の姿としてイメージしやすいですが,「深い学び」はどのような姿を求めて授業改善を目指すとよいのでしょうか。

学習指導要領解説理科編では,「深い学び」の実現に向けた授業改善の視点を次のように示しています。

「理科の見方・考え方」を働かせながら問題解決の過程を通して学ぶことにより,理科で育成を目指す資質・能力を獲得するようになっているか

資質・能力には,「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」があります。子供が「見方・考え方」を自在に働かせ,自然の事物・現象に繰り返し関わることで自然の事物・現象から問題を見いだし,予想や仮説をもち,その解決方法を考えたり,知識を関連付けてより深く理解したりする,つまり先に述べた資質・能力の育成につながるものです。

例えば,第三学年の「身の回りの生物」の学習では,モンシロチョウの成長を扱います。そのときに,「他の昆虫も同じように成長するのかな」といった共通性・多様性の「見方」を働かせたり,それらを「比較しながら」調べるといった考え方を子供が自在に働かせたりすることで,バッタやトンボなど昆虫には不完全変態するものがあるという捉えにつながる子供の姿が考えられます。

様々な知識がつながって,より科学的な概念を形成することに向かっているか

資質・能力のうち,特に「知識及び技能」については,前の項でも触れたように,知識を個別の事実的な知識のみを指すものではなく,社会の中で生きて働く知識を含むものとしておさえることを求めています。

例えば,第四学年の「金属,水,空気と温度」の学習では,金属の熱の伝わり方を学習した後に,水や空気の温まり方を扱うことで,水や空気は金属と違って上から順に温まることを捉えます。その時に,金属や水,空気それぞれの温まり方の知識が相互に関連して熱の伝わり方に関する概念的な理解につながる子供の姿が考えられます。

新たに獲得した資質・能力に基づいた「理科の見方・考え方」を,次の学習や日常生活などにおける問題発見・解決の場面で働かせているか

理科の学習で学んだ知識・技能が次の学習や実際の自然の中で成り立っていることを捉えたり,日常生活の中で役立てられていることを確かめたりすることを求めています。

例えば,次の学習につながる例として,電気に関する学習があります。第三学年では電気の通り道,第四学年では電流の大きさや向きを扱う電気の働き,第五学年で電流がつくる磁力,第六学年で電気の利用を学習します。また,全国学力・学習状況調査においても,単元の学習だけではなく,複数の単元の内容を相互に関連させて出題されています。

これらの「深い学び」の実現に向けた授業改善の三つの視点は,これまでも授業改善の視点としてきた内容です。「深い学び」の実現を目指すこれからの授業でも,これまでの授業改善の視点を大切にしていくことが求められているといえます。