Q5
対話的な学びは,どうすれば実現できますか?
A5
多様な考えが生まれる状況をつくり,話し合いでは,他者の考えに触れてみたいという必要感をもたせることが考えられます。
ポイント
- 対話的な学びは,資質・能力を育成するための授業改善の視点であり,対話的な学びそのものが目的ではない。
- 対話的な学びの実現を図るには,多様な考えが生まれる状況をつくり,話し合いに必要感をもたせる。
- 対話的な学びを通して,より妥当な考えをつくりだしていくことを目指す。
「対話的な学び」とは
「対話的な学び」を重視するあまり,必ず毎時間の授業の中でペアやグループでの話し合い活動を取り入れようとしたり,子供たちに機械的に発表させたりしていることはありませんか。前の項でも書いたように,「主体的・対話的で深い学び」の目的は,資質・能力の育成です。けっして,子供たちの活発な話し合いが目的ではないのです。
「対話的な学び」とは,子供同士が問題を解決するなどのようなある目的を達成するために,互いに関わり合って活動することや,教職員や地域の人と対話すること,これまでの優れた考え方を手掛かりに考えることなどを通して,自己の考えを広げ深めることです。このような「対話的な学び」の視点で授業改善することで,身に付けた知識や技能を定着させることができるとともに、物事の多面的で深い理解や,思考を広げ深めていくことが期待できます。
理科では,自然の事物・現象と出会ったときに見いだした問題や,問題に対して発想した予想や仮説,予想や仮説を確かめるための解決の方法,観察や実験で得られた結果から考えられることなど,問題解決の様々な場面で話し合う内容があります。この点で,理科の授業では,「対話的な学び」を取り入れることができる場面がたくさんあると言えます。しかし,話し合うだけでは,理科で求める資質・能力は育ちません。資質・能力の育成を目指す目的達成のために教師による意図的,計画的な話し合いの場を設定することが大切です。
あらかじめ個人で考える
「対話的な学び」の視点で授業改善を図ろうすると,観察や実験の時間が少なくなってしまうことを恐れ,個人で考える時間を与えずにペアやグループで話し合わせることはありませんか。それでは,自分の考えをもたずして話し合いがスタートしてしまうため,自分の考えを広げ深めることは期待できませんし,話し合うことに必然性が生まれません。まずは一人一人が自分の考えをノートなどにまとめ,他者の考えとの違いに触れることで,話し合いに必要感が生まれるのです。
多様な考えが生まれる状況をつくる
子供同士の話し合いに必要感をもたせるには,多様な考えが生じる場面を意図的につくることです。なぜ自分の予想が他者と違うのか,同じ実験結果だったのにどうして考察した内容に違いがあるのかといった状況を設定するのです。そうすれば,子供は自発的に話し合いを始め,教師が「グループでまとめた考えを一班から順番に発表してください」などのような必要感のない形式的な話し合いを避けることができます。
妥当な考えをつくりだす対話的な学び
理科の授業では,より妥当な考えをつくりだすことが求められます。例えば,予想や仮説を発想する場面では,様々な生活経験を基にして発想した予想や仮説について話し合い,共有することで,その根拠が明確になり,妥当性を検討することができます。また,他者の観察や実験の結果について見通しをもつことができ,他者が獲得した観察や実験の結果や考察した内容についても検討することができます。