授業はどのように変わる? 新学習指導要領 Q&A

Q4

主体的な学びは,どうすれば実現できますか?

A4

子供自らが,「見方・考え方」を働かせながら,自然の事物・現象から解決したいと思えるような問題を見いだすようにすることが考えられます。

ポイント

  • 主体的な学びは,資質・能力を育成するための授業改善の視点であり,主体的な学びそのものが目的ではない。
  • 主体的な学びの実現を図るには,子供の問題意識が生じるようにする。

何のための「主体的・対話的で深い学び」か

「主体的・対話的で深い学び」いわゆる「アクティブ・ラーニング」はどのように捉えてどのように進めていけばよいのでしょうか。「アクティブ・ラーニング」の目的は,質の高い学びを実現し,子供たちが学習内容を深く理解し,資質・能力を身に付け,生涯にわたってアクティブに学び続けるようにすることです。その実現のために,手段として,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うのです。

この「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の三つの視点はそれぞれが独立しているものではなく,相互に関連し合うものであると捉えることが大切です。

「主体的な学び」とは

理科では,これまでも子供が主体の問題解決を大切にしてきました。子供自身が,自然の事物・現象から問題を見いだすことからスタートし,子供自身がそれまでの生活経験や学習内容を基に予想や仮説をもち,見通しをもって観察,実験などを行っていきます。そして,観察,実験の結果を基に考察を行い,予想や仮説と一致したのかどうか検討しながら,より妥当な考えをつくりだしていきます。学習の最後には,自らの学習活動を振り返って意味付けたり,得られた知識や技能を基に,次の問題を発見したり,新たな視点で自然の事物・現象を捉えようとしたりしていきます。このような,これまで求めてきた子供が主体の問題解決が実現できているかどうかという視点をもって授業改善をしていくことが,資質・能力の育成を目指す授業改善の一つの視点といえます。

子供自ら問題を見いだす

「主体的な学び」の実現を図るためには,問題解決のスタートでは,子供が自然の事物・現象と関わることを通じて,自ら問題を見いだすことが大切です。

例えば,第六学年「水溶液の性質」では,塩酸にアルミニウムを入れ,その水溶液を蒸発させて残った白い粉はアルミニウムなのだろうかという問題を解決する活動があります。そこでは,教師がその問題を提示して子供に解決を促すのではなく,子供がそれまでに学習したことと目の前で起きている現象を基にして生まれる疑問から子供自らが問題を設定していくようにすることが大切です。塩酸に入れたアルミニウムが溶けていく様子を捉えた子供たちは,見えなくなったアルミニウムの行方に着目し,塩酸の中に存在している,あるいは,目に見えないことから蒸発してなくなったと予想します。その後,実際に蒸発させて白い粉が析出する事実と出会うと,蒸発してなくなったと予想した子供にとっては,白い粉が析出したことに,一方,アルミニウムが存在していると予想していた子供にとっては,アルミニウムとは見た目が異なる物が析出してきたことに驚きます。アルミニウムと白い粉について質的な違いに着目し(見方),比較しながら考えること(考え方)で強い問題意識を生み出し,白い粉はアルミニウムなのだろうかという子供にとって本当に解決したい問題を見いだすことになります。

このように,主体的な学びの実現を図るには,解決したい問題を子供自らが見方・考え方を働かせて見いだすことが大切です。