授業はどのように変わる? 新学習指導要領 Q&A

Q3

理科の「見方・考え方」って,何ですか?

A3

「理科の見方」は,自然の事物・現象を科学的な視点で捉えること,「理科の考え方」は,科学的に探究する方法を用いて考えることです。

ポイント

  • 「見方・考え方」を働かせて資質・能力を育成する。
  • 「見方」は,理科を構成する領域ごとの特徴から整理できる。
  • 「考え方」は,これまで問題解決の能力としていた内容で整理できる。

見方・考え方とは

授業を構想する際に,子供が学びの中でどのような見方で物事を捉え,どのような考え方で思考しようとするのかを捉えておくことは,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善においてとても大切なことです。

では,理科の授業では,どのような見方・考え方が考えられるでしょうか。「見方」については,理科を構成する四つの領域ごとの特徴から整理することができます。

領域ごとの特徴的な見方の例

  • エネルギー:主として量的・関係的な視点
  • 粒子:主として質的・実体的な視点
  • 生命:主として共通性・多様性の視点
  • 地球:主として時間的・空間的な視点

ただし,これらの特徴的な視点はそれぞれの領域だけで働く見方ではないことや,原因と結果,部分と全体,定性と定量などといった視点も考えられます。

問題解決の過程において,どのような考え方で思考していくかという「考え方」については,これまでの学習指導要領で問題解決の能力として整理していた,比較,関係付け,条件制御,多面的に考えることなどが考えられます。

「比較する」とは,複数の自然の事物・現象を対応させて比べることです。「関係付ける」とは,自然の事物・現象を様々な視点から結び付けることです。「条件を制御する」とは,自然の事物・現象に影響を与えると考えられる要因について,どの要因が影響を与えるかを調べる際に,変化させる要因と変化させない要因を区別するということです。「多面的に考える」とは,自然の事物・現象を複数の側面から考えることです。

見方・考え方を働かせる

このような「理科の見方・考え方」を働かせるとどのような授業になるでしょうか。例えば,第三学年の「風やゴムの力の働き」の学習では,量的・関係的な見方を働かせることが考えられます。ゴムで動く車を走らせるときに,ただ単にゴムを引っ張って走らせるのではなく,「ゴムを何センチ引くと車は何メートル走った」などのように,一方の量が変化したときのもう一方の量がどのように変化していくのかといった関係で捉えることができます。また,ゴムを引っ張る長さを複数設定して,走った距離を比較することで,ゴムの引っ張る長さと車の走る距離の関係について問題を見いだすことができます。この問題の見いだしは,新学習指導要領で第三学年において主に育成を目指す問題解決の力とされているものです。

このように,「見方・考え方」を働かせることで,問題解決の力を育成することにつながります。「見方・考え方」を自在に働かせ,自然の事物・現象に関わることができる子供は,どのような視点で自然の事物・現象を捉え,どのような考え方で思考すればよいのかを自覚しながら関わることができるということです。それは,自然の事物・現象から問題を見いだし,予想や仮説をもち,その解決方法を考えたり,知識を関連付けてより深く理解したりすることに向かう「深い学び」を実現することになります。授業を構想する際には,子供が「見方・考え方」を働かせることができるように事象提示や発問などの工夫が求められます。