育成を目指す資質・能力の三つの柱
小学校理科の新学習指導要領では,育成を目指す資質・能力が三つの柱に沿って,
以下のように整理されています。
知識及び技能
自然の事物・現象についての理解を図り,観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
思考力,判断力,表現力等
観察,実験などを行い,問題解決の力を養う。
学びに向かう力,人間性等
自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う。
ポイント
1
思考力,判断力,
表現力等
各学年で育成を目指す問題解決の力が
確実に育成できます。
新学習指導要領では,思考力,判断力,表現力等として,各学年で主に育成を目指す問題解決の力が示されています。また,「理科の見方・考え方」を働かせながら,資質・能力を育成することが求められています。
●各学年で主に育成を目指す問題解決の力
学年 | 問題解決の力 |
---|---|
3年 | 差異点や共通点を基に,問題を見いだす力 |
4年 | 既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想する力 |
5年 | 予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力 |
6年 | より妥当な考えをつくりだす力 |
●理科の見方・考え方
領域 | ||||
---|---|---|---|---|
エネルギー | 粒子 | 生命 | 地球 | |
見方 | 量的・関係的 | 質的・実体的 | 共通性・多様性 | 時間的・空間的 |
原因と結果,部分と全体,定性と定量 など | ||||
考え方 | 比較,関係付け,条件制御,多面的に考える |
従来,各学年で育成する問題解決の能力として示されていた「比較」「関係付け」などは,資質・能力を育成する過程で働かせる「考え方」として整理されました。
「レベルアップ 理科の力」
各学年で主に育成を目指す問題解決の力に合わせて,「レベルアップ 理科の力」を設定しています。
「レベルアップ 理科の力」の主な設定場面
- 3年:問題をつかもう
- 4年:予想しよう
- 5年:計画しよう
- 6年:考察しよう
3年p.117「物の重さをくらべよう」
4年p.47「電流のはたらき」
5年p.59「花から実へ」
6年p.115「大地のつくり」
「理科の見方・考え方」の例示
「理科のミカタ」では,各場面で働かせる見方・考え方を具体的に示しています。
「理科の見方・考え方」を自覚的に働かせながら問題解決の活動を行うことで,「深い学び」が実現し,問題解決の力が育成されます。
●「見方」
3年p.89 「太陽とかげを調べよう」
5年p.133 「生命のつながりを考えよう」
各領域に特徴的な「見方」を単元の内容に沿って具体的に示しています。
「見方」や「考え方」の部分に下線を施し,どの「見方・考え方」を働かせるかを理解しやすいようにしています。
●「考え方」
4年p.73 「暑くなると」
6年p.23 「物の燃え方と空気」
4年では「関係付け」,6年では「多面的に考える」といったような,各学年で主に働かせる「考え方」を,単元の内容に沿って具体的に示しています。
対話場面の充実
「レベルアップ 理科の力」の対話の具体例では,理科の見方・考え方を働かせ,問題解決の力が育成された児童の姿を具体的に示しています。児童も先生も,対話のねらいやポイントが分かり,対話的な学びが充実します。
4年p.173~174「水のすがたと温度」
既習の内容を基に,根拠のある予想を発想した児童の姿
単元末の「たしかめよう」の「考えよう」では,各学年で主に育成すべき問題解決の力を確認する問題を設け,その育成状況を見取ることができるようにしています。
詳しくはこちら1年間の学びを見通す巻頭と,身に付けた資質・能力を振り返る巻末
巻頭では,各領域で働かせる「理科の見方・考え方」や,学ぶ内容を見通せるページを設けています。 また,巻末には,問題解決の力や理科の見方・考え方について,1年間で学んだことを振り返るページを設けています。1年間で学んだことの定着をより確かなものにします。
3年p.2〜3
各領域で働かせる「見方」を,児童が理解できる表現で示しています。
3年p.170〜171「学んだことをふり返ろう!」
問題解決の力について振り返ります。
理科の見方・考え方について振り返ります。
ポイント 2 知識及び技能 知識及び技能を確実に習得できます。
新学習指導要領では,知識及び技能を習得するとともに,それらを他の場面や日常生活でも活用できるように,概念的な理解を図ることが求められています。
簡潔で分かりやすい「まとめ」
「まとめ」は「問題」と正対した表現にするとともに,箇条書きにして,簡潔に表現しています。
4年p.134「物の体積と温度」
巻末では,学年で学んだ内容や用語をまとめています。1年間で学んだことを振り返ることにより,知識の確実な定着を図ります。
4年p.208〜209「学んだことをふり返ろう!」
知識及び技能の確実な定着を図る単元末の「たしかめよう」
単元末の「たしかめよう」で,学んだ内容の確認を行います。[わかったかな・できたかな]では,知識及び技能の確実な定着を図ります。
5年p.63「花から実へ」
より深い理解へと導く「学びを生かして深めよう」「学びをつなごう」
「学びを生かして深めよう」では,習得した知識を使って日常生活の事象などについて考えることで,習得した知識が「使える知識」に深まります。また,「学びをつなごう」では,下位学年や他単元で学んだ内容を使って総合的に考え,整理することができます。知識がつながり,科学的な概念を形成する「深い学び」の場面です。
4年p.146「物のあたたまり方」
6年p.68〜69「植物について考えよう」
巻末の基礎技能の充実
観察,実験の際に必要な基礎技能は,巻末の「資料」にまとめて示しているため,必要なときにすぐに確認できます。器具などを使う目的,操作の意味などを理解しながら,技能の確実な習得を図ります。
5年p.170「理科の調べ方を身につけよう」
操作の意味を捉え,適切な使い方ができるようにしています。
ポイント
3
学びに向かう力,
人間性等
児童の興味・関心と学ぶ意欲を引き出し,
主体的に問題解決しようとする態度を育みます。
新学習指導要領では,意欲的に自然の事物・現象に関わろうとする態度,粘り強く問題解決しようとする態度,他者と関わりながら問題解決しようとする態度,学んだことを自然の事物・現象や日常生活に当てはめてみようとする態度などを育成することが求められています。
理科の世界に引き込む巻頭
児童が理科と出会う巻頭ページでは,ダイナミックな写真と簡潔なメッセージで,児童を理科の世界に引き込みます。
内容は,各学年で主に育成を目指す問題解決の力とも対応させているので,これからの理科の学びで大切にすべきことを捉えたうえで,意欲的に学びを進めることができます。
4年表紙裏〜p.1
新たな問題を見いだす
「まとめ」の後に,学んだことを使って新たな問題を見いだす「次の問題を見つけよう」を設けました。意欲的に学び続ける態度を育成することができます。
3年p.110「音を出して調べよう」
「クリティカル・シンキング」の力
「〇〇を見直そう」では,友達の考えを受け入れて,自らの考えを見直し,より妥当な考えに改めるなど,他者と関わりながら粘り強く問題解決しようとする態度を育成することができます。
5年p.158「ふりこのきまり」
友達と対話し,自らの考えを見直す
「レベルアップ 理科の力」の対話の具体例では,友達の考えを参考にして,自らの考えを見直し,深めていく児童の様子を示しています。
4年p.136「物の体積と温度」