授業はどのように変わる? 新学習指導要領 Q&A

Q2

未知の状況にも対応できる「思考力,判断力,表現力等」はどうすれば育成できますか?

A2

自然の事物・現象に関わる際に,子供が意識的に「比較する」「関係付ける」などの考え方を働かせることができるような授業にすることが大切です。

ポイント

  • 理科では「思考力,判断力,表現力等」として,問題解決の力を求めている。
  • 現行の学習指導要領で育成を目指すことが示されていた問題解決の能力は,「考え方」として整理され,自然の事物・現象に関わる際に子供が意識的に働かせることができるように授業を展開する。

なぜ「思考力,判断力,表現力等」が求められるのか

子供たちが活躍する将来を見据えたときに,社会は,どのようになっているでしょうか。人工知能が進化して人間が活躍できる職業の約半数がなくなるのではないかという予測すらあり,誰もが将来を予測することが困難な社会が待っているとも言えるでしょう。そのような中で,これからの学校教育では,子供たちに未知の状況にも対応できる未来を切り拓いていくために必要な思考力,判断力,表現力等を育成することが求められます。

理科で求める「思考力,判断力,表現力等」

新しい学習指導要領で整理されている資質・能力のうち,「思考力,判断力,表現力等」については,小学校理科では,各学年で主に育成を目指す問題解決の力として具体的に示されています。

各学年で育成を目指す問題解決の力

  • 三年:比較しながら調べる活動を通して,主に差異点や共通点を基に,問題を見いだし,表現すること
  • 四年:関係付けて調べる活動を通して,既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想し,表現すること
  • 五年:条件を制御しながら調べる活動を通して,予想や仮説を基に,解決の方法を発想し,表現すること
  • 六年:多面的に調べる活動を通して,より妥当な考えをつくりだし,表現すること

ここで示している力は,該当学年において主に育成することを目指す力を示したもので,他の学年で掲げている力の育成についても十分配慮することが大切です。

現行の学習指導要領においても学年を通して育成する問題解決の能力が示されていて,第三学年では,身近な自然の事物・現象を比較しながら調べること,第四学年では,自然の事物・現象を働きや時間などと関係付けながら調べること,第五学年では,自然の事物・現象の変化や働きをそれらにかかわる条件に目を向けながら調べること,第六学年では,自然の事物・現象についての要因や規則性,関係を推論しながら調べることが示されています。これらは,子供が問題解決の過程の中で用いる,「考え方」として整理することができます。例えば,現行の第三学年にある「比較する」とは,複数の自然の事物・現象を対応させて比べることです。しかし,比べるだけでは未知の状況に対応できるとは言えません。比較することで,差異点や共通点が明らかになり,問題を見いだすことが可能となります。また,現行の第四学年にある「関係付ける」とは,自然の事物・現象について,既習の内容や生活経験と結び付けて捉えたり,変化とそれに関わる要因とを結び付けたりすることです。解決したい問題についての予想を発想する際には,自然の事物・現象と既習の内容や生活経験と関係付けたりすることで,単なる思いつきや当てずっぽうではなく,根拠のある予想や仮説を発想することが期待できます。このようなことから,現行で示されている問題解決の能力が「考え方」として整理されました。子供自らが考え方を意識的に働かせながら自然の事物・現象に関わることができる学習を展開することが,新しい学習指導要領で求める問題解決の力を育成するためには重要になります。