道徳のこと。 ぜひ,ご一緒に。
 各教科の先生から
見た道徳




元公立中学校校長

英語科と道徳科のコラボレーション英語

1. 英語を習得するために大切なこと

 英語教師として,英語学習者のひとりとして,自分が英語を学んできた過程を振り返ると,学問的,科学的,普遍的な内容ではありませんが,何か原理,原則,主義のようなものが,自分の内に形成されていることに気づきます。

 私たちの日常生活の場面は,常に日本語で私たちの前に立ち現れてきます。身の回りで生起する様々な出来事を,私たちは心内において日本語で解釈,説明,描写しているのです。日本国内で外国語として英語を学ぶということは,その日本語を英語にスイッチすることだと思います。そのためには英語を学習する教材が大切なのです。日本人英語学習者が日本に居ながらにして英語を学ぶ,その際に,自分の回りの事物を日本語から英語にスイッチして,身の回りの出来事を英語で解釈する,説明する,描写することができる教材や素材を用意して,活用すれば,日常的に英語を学習することが可能となります。海外のコースブックにはその様な発想のもとに編集され,ロングセラーとなっているものがあります。

2. 英語科と道徳科のコラボレーション

 では,日本の中学校に目を向けると,その様な教材となりうるものがあるでしょうか。教科化された「特別の教科 道徳」の読み物教材は,活用の仕方によっては,有効な英語教材になりえます。なぜなら読み物教材の多くは生徒の日常生活に根ざした生活資料が中心であり,文部科学省の「私たちの道徳」に収録されているものの多くは生徒の身近な出来事を取り扱っているからです。これは当然のことでしょう。「特別の教科 道徳」はまさに自分たちの生活そのもので,それを素材として,ああでもない,こうでもないと考え,その考えを吟味,検討していく時間なのですから。

 読み物教材を読んで,登場人物の行為,行動の是非について根拠を示しながら話し合うということになりますが,このことを中学3年生の英語学習の到達目標に設定できると思います。読み物教材そのものも英語で記述されていて,その内容について英語で話し合い,授業の終末に今日の授業で考えたことを英語で記述するとすれば,道徳科の授業そのものが英語科の4技能(聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと)をバランスよく学ぶことのできる英語科の時間ともなりうるかもしれません。

 そして,意見の述べ方が大切です。まず,自分の主張を述べ,その根拠となるもの,主張を支持するものを述べてさらに主張を繰り返すという,そのフォーマットそのものが,ものの考え方,述べ方のロジックを学ぶことにつながると思います。

3. 語彙の選定と意見を述べる文構造のスパイラルな学び

 そのためには,学ぶ語彙の選定が重要です。自分の日常生活を描写できる語彙を増やす必要があります。文構造は,I think that …. / I am sure that …. / … because …. など話し合いに必要な,自分の考えを述べるのに欠かせない表現を,機会あるごとに,スパイラルに学ぶことが大切です。次回の英語科の新学習指導要領の改訂では,小学校での教科化を踏まえ,これまで以上にまとまりのある英文を読んで,その内容について話し合うことのできる英語力を目指す,と聞いております。英語科と道徳科のコラボレーションが待たれるところではないでしょうか。

ページを閉じる

ページの先頭へ