道徳のこと。 ぜひ,ご一緒に。
 各教科の先生から
見た道徳

江戸川区立葛西第三中学校 主幹教諭 城戸加代子
江戸川区立葛西第三中学校
主幹教諭
城戸加代子

道徳に有利な国語教師国語

1. はじめに

 国語教師として,よく言われるのが「国語の先生はいいよね。いつも文章を読んでいるし,道徳の準備も楽だよね。」ということです。確かにその通りです。そこで,国語教師が道徳の授業に有利な点と落とし穴に陥らないようにする点を考えてみたいと思います。

2. 国語教師に有利で自信にしたいこと

 国語と道徳で共通して,大切にしていることのひとつに音読があります。どちらの教科も教材との出会いは,教師の音読がほとんどです。私は,教材の内容が生徒によく伝わるように,事前に音読の練習を最低3回はするように心がけています。

 音読するときに注意しているのは,読点で切らず意味のひとまとまりは一息で読むようにすることと,登場人物の会話文はなりきって読むようにすることです。また,時には朗読CDなどを聞き,自分の読み方のチェックをしています。若い頃に,音読やスピーチの研修会に参加したことが今に生きていると思います。

 『一冊のノート』や『語りかける目』などの感動的な教材は,音読の練習の時から何度も涙が出てしまいます。子どもたちの前で読むときにも,私は我慢せず涙を流しながら教材を読みます。教材を読んでいる最中に,子どもたちが聞き入り,心で受け止めると教室の空気が変わっていきます。それを肌で感じるのが,とても好きです。

3. 国語と道徳の違い(落とし穴に陥らないために)

 国語は,文章の叙述に即して考え,登場人物の心情を考えるときに,「どこにどのように書いてあるからこうなのだ。」という叙述を正しく読み取った上での理解となります。教材を「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成するため」に読むのです。

 道徳は,子ども自身の内面を考えさせていくので,「もし,自分がその登場人物の立場になったらどう考えるのだろうか。」ということを想像させていくことが大切で,行間を想像し,文章には見えない心を考えていきます。教材は,「道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」ために読みます。

 例えば,中学1年生の国語の教科書によく掲載される『少年の日の思い出』(ヘルマン=ヘッセ作)の最後の部分に,主人公が「僕は,そっと食堂に行って,大きなとび色の厚紙の箱を取ってき,それを寝台の上に載せ,闇の中で開いた。そしてチョウチョを1つ1つ取り出し,指でこなごなに押し潰してしまった。」とあります。国語だったら,「『僕は,そっと食堂に行って,・・・・指でこなごなに押し潰してしまった。』のはなぜだろう。」と聞き,主人公である僕の行動の理由を問うことで,心情の変化を理解します。もし,これが道徳なら,「指でこなごなに押し潰しながら,僕はどんなことを考えていただろう。」とし,主人公を通して自分ならどう考えるだろうか,と子ども自身が自分に重ねながら,考えていきます。

4. 終わりに

 私の道徳授業の長年の目標は「語り合いのある授業にする」ことです。その目標を達成するために,生徒同士が安心して語り合えるような雰囲気をつくる学級経営と,語り合うに値する発問を考えることに力を入れています。今後も教材研究に力を入れ,生徒の心に残るような,国語の授業と語り合いのある道徳授業を目指していきたいと思います。

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