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「特別の教科 道徳」の
要点を徹底解説

「特別の教科 道徳」新設までの経緯と趣旨

 まずはじめに,どのような経緯で「特別の教科 道徳」が新設されるに至ったのかについて振り返り,次に,なぜ「特別の教科 道徳」が提言されたのか,その趣旨について確かめておきましょう。

(1)「特別の教科 道徳」新設に至るまでの経緯

①我が国の教育改革を推進するため,平成25年1月,第二次安倍内閣が「教育再生実行会議」を設置しました。

②その「教育再生実行会議」では,当時,大津市立中学校でのいじめ自殺事件が発生し,その後の学校や教育委員会の対応なども含めて大きな社会問題となったことから,はじめに「いじめ問題」とその対策が審議されました。そして,平成25年2月に出された「いじめの問題等への対応について」(第一次提言)の中で,「いじめ対策の法律の制定」や「道徳の教科化」などが提言されました。

③この提言を受け,文部科学省は平成25年3月に「道徳教育の充実に関する懇談会」を設置し,上記の提言も踏まえた今後の我が国の道徳教育の充実に向けた検討を開始したのです。

④そして,平成25年12月には,その懇談会の報告書「今後の道徳教育の改善・充実方策について」がまとめられ,その中で「特別の教科 道徳」の新設などが提言されました。

⑤その提言を受け,平成26年2月に文部科学大臣から諮問を受けた中央教育審議会では,「特別の教科 道徳」の新設なども含めた今後の道徳教育の改善・充実方策についての審議が開始されました。その結果,平成26年10月に「道徳に係る教育課程の改善等について(答申)」が出され,「特別の教科 道徳」の新設に関する提言がなされたのです。

⑥その後,その答申を受けた文部科学省では,道徳の教科化に向けた検討を進め,平成27年3月に学習指導要領の一部改正を告示し,「特別の教科 道徳」が正式に教科として教育課程に位置付けられることになったのです。

(2)「特別の教科 道徳」新設の趣旨

①なぜ,「特別の教科 道徳」の新設が求められたのでしょうか。
「特別の教科 道徳」がはじめて提言されるに至った背景の一つとして,平成23年10月に,大津市立中学校でのいじめによる自殺事件の発生がありました。そして,その事件がいじめの問題として全国的に大きな社会問題となったことから,改めて道徳教育の充実が強く求められるようになったのです。

②「特別の教科 道徳」の新設の趣旨はどのように述べられているのでしょうか。
「道徳教育の充実に関する懇談会」の報告書「今後の道徳教育の改善・充実方策について」では,その趣旨についておよそ次のように述べられています。

○  道徳教育は,自立した一人の人間として人生を他者とともによりよく生きる人格の完成を目指すものであり,教育の根本に据えられるべきものである。

○  しかし,道徳教育の現状として,その理念が共有されておらず,教員の指導力が十分でないなど,多くの課題が存在している。

○  今後,グローバル化などが進展する社会において,道徳教育は,人間教育の普遍的で中核的な構成要素であるとともに,その充実は今後の時代を生き抜く力を一人一人に育成する上での緊急課題である。

○  そこで,道徳教育が,学校の教育活動全体の真の中核としての役割を果たすよう,早急に抜本的な改善・充実を図る必要がある。

○  道徳の時間については,体系的な指導により,道徳的な価値に関わる知識・技能を学ぶという「教科」と共通する側面と,人格全体に関わる力を育成する側面を有しており,その双方の側面から,より総合的な充実を図ることが重要である。

○  このことを踏まえ,道徳の時間を「特別の教科 道徳」(仮称)として位置付け,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の要としての性格を強化し,それ以外の各教科等における指導との役割分担や連携の在り方等を改善することによって,道徳教育の一層の改善・充実を図ることが求められる。


図 「特別の教科 道徳」(イメージ)

 また,「道徳教育の充実に関する懇談会」副座長の押谷由夫氏は,「特別の教科 道徳」の新設について,「道徳教育全体の充実はもとより,学校教育の構造そのものを,道徳教育を中核にしたものに変えていく切り札」として位置付けているとの考えを述べています。そして,その趣旨は,およそ次のように図に表すことができると考えられるのです。

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