国と郷土を愛する

教育基本法に示された教育目標と教科書

東京書籍の取り組み

「伝統と文化を」を通して育てる

国士舘大学教授北 俊夫

健全な国家・国民意識を育てる

子どもたちは,家庭や学校,地域社会,さらには国家など様々な集団や社会に帰属し,その中で活動し生活しています。自分の帰属している集団や国家・社会について理解を深めるとともに,それらの一員としての自覚をもち,誇りと愛情をはぐくむことはすべての人たちが共通して願っていることです。このことは教育基本法第2条(教育の目標)第五項に「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(略)態度を養うこと」と規定されているように,学校教育における重要な課題になっています。

いまや,人や物だけでなく,情報や金融など様々な面で国際社会のグローバル化が急速に進行しています。こうした国際社会において様々な国と地域の人々と協調しながら主体的,創造的に生きていくためには,日本人としてのアイデンティティをしっかりもつことが求められます。そのためには,自国の歴史や伝統・文化について理解を深めるとともに,広い視野をもって異文化を理解し,それらを尊重する態度や,異なる文化をもった人たちと共に生きていく態度と能力を身につける必要があります。

先に示した条文の後半には「他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と規定されています。健全な国家・国民意識を育てるためには,「国や郷土を愛する」教育と国際理解と国際協調を深める教育を一体にとらえることが大切です。

「伝統と文化」を尊重する教育の推進

「国や郷土を愛する態度や心」はどのように育てられるのでしょうか。例えば動物に対して優しく接する態度や心は,「優しくしなさい」と,一方的に強要したり,言葉だけで教え込んだりしても育ちません。動物に触れて感じさせたり,実際に飼って餌を与えたりすることによって,その動物を正しく理解し,優しく接する態度や心が育っていくものと考えられます。「国や郷土を愛する態度や心」を育てるためにも,教育的な配慮のもとに学校や教師の意図的な指導が求められます。

「国や郷土を愛する」教育と深いかかわりがあるのが,我が国や郷土の「伝統と文化」を尊重する教育だと考えます。わが国の優れた伝統と文化を理解することは,先人の創り出した文化財や文化遺産に対して誇りをもち,それらを継承・発展させていこうとする意欲と態度を醸成することにつながるからです。

「伝統と文化」を尊重する教育を推進する際には,例えば次のような事項について指導することが考えられます。

  • 国家・社会の発展に尽くしてきた先人の業績や働きや努力について進んで学ぶことにより,我が国や郷土の歴史に対する理解と関心を深める。
  • 我が国や郷土に根づいてきた伝統的な芸能や生活文化,産業の状況とともに,優れた文化財や文化遺産の意義を理解し,それらを継承・発展しようとする意欲や態度を養う。
  • わが国や郷土の豊かな自然環境を理解し,地域や国土の環境保全に尽くそうとする。
  • 家庭や学校,地域社会や国家,さらには国際社会の一員としての自覚をもち,よりよい社会の形成に進んで参画・貢献しようとする。

「伝統と文化」教育と教科書の役割

「伝統と文化」に関する教育のための時間は,各学校が目標や内容を定めることができる「総合的な学習の時間」を除いて用意されていません。「伝統と文化」教育は,教育活動全体を通じて推進する課題とされており,具体的には,各教科等の学習指導の中で伝統と文化について取り上げることになります。

各教科等の学習指導要領には,伝統と文化に関する事項が目標や内容,教材や題材などのレベルで示されています。目標や内容のレベルで関連のある教科等は,国語,社会,生活,音楽,図画工作,美術,体育,保健体育,道徳などです。他の教科等も教材や題材のレベルで関連しています。

児童・生徒にとって,最も身近で,共通した学習教材は教科書や副読本です。とくに教科書のもつ役割は大きく,各教科等の教科書に「伝統と文化」に関する教材や題材がどのように示されているか。このことは各学校における「伝統と文化」教育の質を大きく左右します。「伝統と文化」教育に当たっては,各教科等の特質を踏まえ,教科書教材の十分な吟味と検討が求められます。

北 俊夫(きた としお)
東京都公立小学校教員,東京都教育委員会指導主事,文部科学省初等中等教育局教科調査官,岐阜大学教授を経て,現在,国士舘大学教授。専門は社会科教育。
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