学力を伸ばす

教育基本法に示された教育目標と教科書

東京書籍の取り組み

学力を伸ばす教科書とは

白梅学園大学教授無藤 隆

学校教育と教科書

知識・技術,能力,態度

学校教育は学力の育成が大きな狙いである。教育基本法では,幅広い知識・教養,真理を求める態度,能力,創造性,自主・自律の精神,勤労を重んずる態度などとして教育目標に明確にされている。学校教育法では,「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養う」として,学力の三要素を定めている。

教科書は何より,基礎的な知識及び技能,思考力,判断力,表現力等,また主体的に学習に取り組む態度を育成するための主たる教材である。その点への具体的な配慮がどこまでなされているかが教科書の教材としての良否を決めるのである。その上で,学習指導要領の規定するところの学習指導への基本的な視点を取り入れ,子どもの学習を活性化できるかが問われる。

授業を支える教科書

まず,学力の三要素を明示して,授業での活動につなげているかを検討してほしい。

第一に,基礎的な知識・技能を育成するように,各教科毎に何が基礎的な知識・技能に該当するかを洗い出し,それを確実に教科書で扱うようにするのである。言うまでもないことではあるが,これが確かな学力の土台となる部分である。改めてその点を確認し,授業での繰り返しの指導につなげたい。

第二に,今回の学習指導要領でとりわけ強調されているのが,思考力,判断力,表現力の指導である。教科書の教材は特にこの点を伸ばすための工夫を行っている。考える力は単に考えるように指示して発揮され,伸びるわけではない。考えるに値するだけの素材があり,子どもがそれに向き合い,問うべき課題という視点でその教材を見直し,関わり続けるところで育成されるのである。

第三に,主体的に学習に取り組む態度を育成するためにどのような仕掛けを教科書に組み込み,それを担当する教師が授業で利用できるかが問われる。この態度とは単にやる気があるとか,意欲を持っているということを指しているのではなく,学習者が自発的に学ぼうとし,学ぶやり方を考え,学ぶあり方を考えつつ,そこに喜びを感じて,学びを継続させていくことを指している。学習は楽しく,やりがいがあり,そして自ら学び続けられると確信できる。そのために,面白い教材について,意義ある視点を持って,持続的に取り組むような授業を実現するのであり,その支えが教科書なのである。

そういった学力を形にすべく,学習指導要領では指導のあり方として,習得と活用と探究という三つのあり方とその間の循環する関係を提起している。習得と活用と探究は各々学力の三要素に対応しつつ,実際にはその習得と活用と探究の間の三つの相互発展関係こそが学力の形成の要であるとして提起されている。基礎的・基本的事項を習得し,それを活用において思考力等の育成で生かしていき,さらに探究において主体的な学びの態度へとつなげる。だがさらに,活用から習得に戻り,思考して分かった結果を確実に覚えるようにし,また探究へと発展させて学習課題を子ども自身が探し追究するようにする。習得と活用と探究の間に縦横の関係が起こりつつ,それぞれの指導については教材に即して丁寧な発問と子どもの導きを進めるのである。

そういった指導が可能になるように教科書の教材が仕組まれているかどうか。習得ではどうか。活用に向けての指導はやりやすくなっているか。探究での発展につないでいるか。

体験と言葉をつなぐ教科書の役割

体験と言葉ということが学習指導要領の改訂のもう一つの視点である。言語力の育成は言葉が思考,判断,表現の要となるからである。その言葉とは狭義の日本語というよりもっと広く,多様な記号・用語を用いた表現活動と読解のあり方に対応している。各々の教科毎に表現活動を多様に提示し,それを目的や場面に応じて活用することが子どもの思考力を伸ばす。

さらにその言葉は子どもの体験に根付いたものであってほしい。どういった体験活動が可能であり,そこからどう広義の表現活動につなぐのかの示唆も教科書において多数示されることになる。

無藤 隆(むとう たかし)
お茶の水女子大学助教授,同教授,白梅学園大学学長等を経て,現在,白梅学園大学教授。中央教育審議会委員などを歴任。専門は発達心理学,教育心理学。
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