現代社会 ダイジェスト版
45/100

第3章 現代社会と法 1035101520 個人と個人,個人と法人4,法人と法人との間の関係を私し法ほう的な関係とよぶ。私法に関する近代法の原則として,物の持ち主はその物を自由に扱うことができること(所有権絶対の原則),あることがらの当事者が自由に約束をすることができること(契約自由の原則)などがある。ただし,これらの原則は無制限なものではなく,社会全体にとっての利益(公共の福祉(→p.71))に反する形での所有権の主張や,社会生活の正しい秩序(公こう序じょ良りょう俗ぞく)5に反する契約は無効である。経済生活と法わたしたちは,生活するうえでさまざまな契約"をすることになる。■売買■ ある物を売りたい人(売うり主ぬし)と買いたい人(買かい主ぬし)がその意思を示せば,売ばい買ばい契約が成立し,買主には代金を支払う義務が,売主には物をきちんと受け渡す義務が生じる。ただし,近年では消費者保護(→p.140)のために,一定の期間内なら無条件で買い物の取り消しができるなど,買主の権利をより強いものにする制度も設けられている(→p.105)。■金融■ 家を建てたり車を買ったりするときには,銀行などから金を借りることがある。借かり主ぬしは貸かし主ぬしから借りた金を,約束した割合の利り息そくとともに,期限までに返さなければならない。貸主は借主に対して,万一の場合に借主のかわりに返済する義務を負う保ほ証しょう人にんや6,金を返せない場合にかわりに差しだす担たん保ぽな7どを求めることがある。なお,借主と同じ義務を第三者が負う連れん帯たい保ほ証しょう制度については,義務が重すぎるので見直されるべきとの議論もある。4個人以外で法律上の規定により権利,義務の主体となることができるもので,公的法人(独立行政法人など),営利法人(株式会社など),非営利法人(公益法人など)などがある。 5民法は私し的てき自じ治ちを原則としているが,これを無制限に認めると公おおやけの秩序(国家や社会などの一般的な秩序)や善良の風俗(社会の一般的な道徳観念や社会通念)を害するおそれがある。そのため,民法は公序良俗に反する法律行為を無効としている(民法第90条)。6民法上は保証債さい務むを負う人をいい,連れん帯たい保証人であれば,借りた本人と同等の地位となるため債務者と同じ義務を負う。7物ぶっ的てき担たん保ぽには,質しち権けん(債さい権けん者が債務者のものを預かり,弁べん済さいしないときはそれを弁済にあてる)や,抵てい当とう権けん(物件は債務者のところにとどまる)などがある。Q"日常生活のなかの契約の例 契約はおたがいが合意すれば,必ずしも契約書は必要でない。日常生活のなかのこうした行為にはすべて,契約がかかわっている(→p.105)。 Aさんは友人のBさんに頼まれ,軽い気持ちでBさんの借金の連帯保証人になるという書類にはんこを押した。連帯保証とは,本人と同じ返済義務を負い,本人が支払いできなくなった場合には,かわって支払うという意味である。 不幸なことに,Bさんは会社に解雇され,借金の返済ができなくなった。すると貸かし金きん業者はAさんを訪れ,かわりに借金を返すように迫せまった。Aさんは生活が苦しいなか,Bさんの借金の返済に追われることになったのである。Bさんはその後破産し,借金の支払い義務はなくなり,Aさんの支払い義務だけが残った。 このように連帯保証はきわめて重い責任をもたらすので,引き受けるかどうか慎重に検討すべきである。連帯保証人になると携帯電話をかけたバスに乗った宅配便で荷物を送ったジュースを買ったプロ野球の試合をみたレンタルでDVDを借りた43

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る