第2編 中世の日本と世界74源みなもとの頼より朝ともの死後に書かれた記事 『吾あ妻ずま鏡かがみ』は,鎌かま倉くら時代後期に幕府関係者によって編へん纂さんされた歴史書。源頼朝の地位を,長男の頼より家いえが継けい承しょうした際の記事。この日に行われた「吉きっ書しょ始はじめ」は,頼家による鎌かま倉くら殿どのの地位継承と政務開始を示す儀式である。武家権力の原点 中世は武士が大きな力を持った時代であるが,そもそも武士とはどのような存在だったのだろうか。は,おもに平安時代末期から鎌かま倉くら時代の上級武士が用いた大おお鎧よろいとよばれる鎧で,馬上での弓矢を使った戦いに適した形態となっている。は,腰こしにつり下げて携行した太た刀ちである。とは,ともに武士が神社に奉ほう納のうしたものであった。武士はこれらのような武具をどのように入手したのかについても考えてみよう。武家権力と朝廷・寺社 中世に登場した武家権力は,従来した朝ちょう廷ていや寺じ社しゃとどのような関係にだろうか。また,その関係のあり方うに変化していったのだろうか。廷が幕府をどのような存在と位置づのかを読みとってみよう。とか府がどのような人々を動員できたのの背景とともに考えてみよう。時代末期から室むろ町まち時代中期にかけてある。天皇家が分裂して内乱が発生で,武士がどのような役割をはたし朝廷や寺社の関係者からどのようにられていたのかを読みとってみよう歴史資料と中世の展望中世に関係する諸資料を活用して,時代の特色についての仮説を立ててみよう 蒙もう古こ人じん対つしま馬・壱い岐きに襲しゅう来らいし、既すでに合戦を致いたすの由よし、覚かく恵え(鎮ちん西ぜい奉ぶ行ぎょう少しょう弐に資すけ能よし)注申する所なり。早く来る廿はつ日か以前、安あ芸きに下げ向こうし、彼かの凶きょう徒と寄せ来らば、国中の地じ頭とう・御ご家け人にんならびに本ほん所じょ・領りょう家け一いち円えん地の住人らを相あい催もよおし、禦ふせぎ戦はしむべし。(『東寺百ひゃく合ごう文もん書じょ』文ぶん永えい十一〈一二七四〉年十一月一日 関東御み教ぎょう書しょ案) 羽う林りん殿でん下か(源みなもとの頼より家いえ)去る月廿はつ日か、左さ中ちゅう将じょうに転じ給ふ。同廿にじゅう六日の宣せん下げに云いはく、前征せい夷い将軍源朝あ臣そん(頼より朝とも)の遺ゆい跡せきを続つぎ、宜よろしく彼かの家け人にん・郎ろう従じゅうらをして旧もとの如ごとく諸国守しゅ護ごを奉ぶ行ぎょうせしむべし者てえり。彼の状到着の間、今日、吉きっ書しょ始はじめ有り。(中略)この事、故将軍薨こうじ御たまふの後、未いまだ廿にじっヶか日にちを経ずと雖いえども、綸りん旨じ厳密の間、重々その沙さ汰た有り、内々の儀を以もって、先まずこれを遂とげ行はると云うん々ぬん。(『吾あ妻ずま鏡かがみ』正しょう治じ元〈一一九九〉年二月六日条)三みつ鱗うろこ紋もん兵ひょう庫ご鎖ぐさりの太た刀ち(東京国立博物館蔵) 北ほう条じょう氏が伊い豆ず山さん神社に奉ほう納のうしたと考えられている太刀。北条氏の家か紋もんである三鱗がほどこされている。元軍襲しゅう来らいの防戦を命じる命令書 元軍襲来の情報を受けて,鎌かま倉くら幕府の執しっ権けん・連れん署しょから安あ芸き国の守しゅ護ごであった武たけ田だ信のぶ時ときにあたえられた。武家権力による日本社会の変容武家権力は,社会をどのように変えたのだろうか。武家権力そのものは,どのように変化していったのだろうか。資料をもとに,自分なりの仮説を立ててみよう。赤あか糸いと威おどしの鎧よろい(東京国源みなもとの頼より朝ともの信頼が厚国の有力御ご家け人にんでが,御み嶽たけ神社に奉られる大鎧を復元模第章2問いを立ててみよう中世とはどのような時代なのだろうか。古代から中世への転換期となるこの章の学習をふまえ,①政治や社会,②人々の生活,③対外関係,などの観点から,時代を見通す問いを立ててみよう。たとえば,次のような問いが考えられるだろう。14第2章では,第1章で立てた問いを基に,諸資料を活用しながら時代の特色の仮説を立てます。12Point飢饉のなかで この時代は,地球規き模ぼで気候の寒冷化が進み,多くの飢き饉きんが発生した。とは,飢饉の対策として鎌かま倉くら幕府が定めた法であり,とからは,飢饉のなかでの人々のようすがイメージで厳しい自然環境での人々の生存戦略中世の人々の暮らしはどのようなものだったのだろうか。人々にとって,荘園領主たちはどのような存在だったのだろうか。資料をもとに,自分なりの仮説を立ててみよう。 人じん倫りん(人身)売買停と云いひ、関東の施し行こうたり。しかるに寛かん喜き子孫を沽こ却きゃく(売却)しし、活命の計らひにれば、還かえりて人の愁しゅう沙さ汰たす。(中略)自じ今こんこれを停止せしむべ(延えん応おう二〈一二四〇〉年正 諸国飢き饉きんの間、遠山さん野やに入りて薯しょ預よ・江こう海かいに臨のぞみて魚ぎょ鱗りん・の業を以もって、活計を頭とう、堅かたく禁きん遏あつせしむ止を止め、浪ろう人にんの身(下略)(正しょう嘉か三〈一二五九〉①困こん窮きゅうした者たち ②5中世日本の国際交流中世の日本をとりまく国際交流には,どのような特徴がみられるだろうか。資料をもとに,自分なりの仮説を立ててみよう。12~14世紀にかけての日本と中国との交流 と対つし5「日本史探究」の学習②仮説を立てる②人々の生活 教p.76③対外関係 教p.78問い・仮説を立て,表現する活動を通して,内容を第1章で示した3つの観点それぞれに対する展開例を提示しています。p.13教p.73①政治や社会
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