「日本史探究」ダイジェスト版
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第1章 中世社会の成立71❸ 出しゅっ家けした上皇を法皇という。❹ 頼長は合戦のなかで死亡し,上皇は讃さぬ岐きに流された。為義ら武士たちは処刑され,朝ちょう廷ていによる死刑が約350年ぶりに行われた。❺ 摂関家出身の僧そう慈じ円えんは,その著書『愚ぐ管かん抄しょう』に,「これ以後,武む者さの世になった」と記した。❻ 荘しょう園えんの整理や僧そう兵へいの取り締まりを強化するとともに,大だい内だい裏りの再建にもとりくんだ。(むしゃ)鳥羽上皇方天皇方崇徳(兄)後白河(弟)忠実頼長(弟)忠通(兄)為義(父)為朝(弟)義朝(兄)忠盛忠正(叔父)清盛(甥)皇室藤原氏源氏平氏(子) 保元の乱の対立関係 〔天てん仁にん元年正月〕廿四日。天、快晴。日、甚はなはだ明し。夜に及および参さん内だいす。除じ目もく入じゅ眼げんに依よるなり。(中略)今度除目の中、因いな幡ばの守かみ正まさ盛もりを以もって但たじ馬ま守に遷任し、幷ならびに男盛もり康やすを以て右う衛え門もんの尉じょうに任じ、平盛もり良よしを以て左さ兵ひょう衛えの尉じょうに任ず。これ、悪人義親を追討するの賞なり。彼かの身、いまだ上じょう洛らくせずと雖いえども、まずこの賞有るなり。件くだんの賞、然るべしと雖も、正盛、最下品の者、第一国に任ぜらる。殊しゅ寵ちょうに依るものか。凡およそ左右を陳のぶべからず。院辺に候ふ人、天の幸を与ふる人か。(中略)裏書に云いはく、 ①受ず領りょう任ぜらるる次第(中略)但馬守平正盛〈元因幡守。悪人源義親を追討するに依り遷任するなり。軍功と雖も、最下げ臈ろうの身、第一国に任ぜらる。世、甘かん心しんせず。なかんずく、いまだ上洛せざる前なり。院の北辺に候ふに依るなり。〉(下略)(『中ちゅう右ゆう記き』) ①以下の文章はもともと日記の裏面に記されていた 受ず領りょうの任命 最も地位の低かった正まさ盛もりが第一国の受領に任ぜられたのはなぜか,それは貴族たちにどのように受け止められたのか,読みとろう。 後ご白しら河かわ天皇像(模本 東京大学史料編纂所蔵)  正盛の子の忠ただ盛もりも瀬戸内海の海かい賊ぞくを討つなどして,鳥と羽ば上皇の信頼をえた。忠盛は,上皇の近きん臣しんの地位をえて西さい国ごくの受ず領りょうを歴任し,貴族社会の仲間入りをはたした。この平氏の勢力をさらに飛躍的に向上させたのが,忠盛の子の清きよ盛もりであった。 源氏は,一族内部の争いによって衰すい退たいしていたが,義親の子の為ため義よしは,摂関家と結びついて少しずつ力をもりかえした。その子の義よし朝ともは,東国の武士団を統とう率そつすることにより,ふたたび棟梁の地位をかためていった。 1156(保ほう元げん元)年に鳥羽法ほう皇おうがなくなると,かわって院いん政せいを行おうとした崇す徳とく上皇は,弟の後ご白しら河かわ天皇と対立した。崇徳上皇は,摂関家の継けい承しょうをめぐって兄の藤原忠ただ通みちと争っていた頼より長ながと結び,源為義や平忠ただ正まさらの武士を集めた。これに対して後白河天皇は,信しん西ぜい(藤原通みち憲のり)と相談し,平清盛や源義朝らを味方につけ,先制攻撃をしかけて,上皇方をやぶった(保元の乱)。京都を舞台に合戦が行われたことや,政治の争いの行ゆく方えが武士の力で決定づけられたことは,この保元の乱が初めてのことであった。そのため,この乱は貴族たちに大きな衝撃をあたえた。 保元の乱ののち,政治の主導権をにぎったのは,平清盛と協力した信西であった。信西は次々と政策を打ち出したが,多くの政せい敵てきをつくった。その一人である藤原信のぶ頼よりは,源義朝を味方にひきいれ,1159(平へい治じ元)年,清盛が熊くま野の詣もうでに出かけた留守に挙きょ兵へいした。信頼と義朝は,信西を殺害するも,清盛との戦いにやぶれて殺害され,義朝の嫡ちゃく男なんの頼より朝ともは伊い豆ずに流された(平治の乱)。 保元・平治の二つの乱の結果,武士の力は貴族社会に浸しん透とうした。その結果,武家をたばねる棟梁となった平清盛の地位と権力は,急速に上昇することになった。1096~1153➡p.661118~811096~11561123~60❸1119~641127~11921097~11641120~56?~1156➡p.66❹❺❻1133~59➡p.80510152013確実におさえます。てみよう①武家権力は,社会をどのように変えたのだろうか。武家権力そのものは,どのように変化していったのだろうか。②中世の人々の暮らしはどのようなものだったのだろうか。人々にとって,荘園領主たちはどのような存在だったのだろうか。③中世の日本をとりまく国際交流には,どのような特徴がみられるだろうか。中世とはどのような時代なの代から中世への転換期となるこの章の学①政治や社会,②人々の生活,③対外関点から,時代を見通す問いを立ててみよ,次のような問いが考えられるだろう。ここで例示している問いは,次の第2章の「課題」になっています。第1章第2章第3章仮説考察問いp.14〜15p.16〜17教材・指導書コンテンツP.34〜3Point興味・関心を高めるページの充実P.24〜2Point資料活用力の育成P.18〜1Point基礎基本の確実な理解P.8〜p.14

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